6/19 勉強会

【研究報告】

担当:巻渕さん

タイトル:Assessing the Effects of the Topical Application of L-Menthol on Pain-Related Somatosensory-Evoked Potentials Using Intra-Epidermal Stimulation

  • 目的:本研究では,一部の鎮痛薬に含まれるL-menthol(冷却感をもたらすミントの成分)によるTRPM8の活性化が、Aδ線維を選択的に活性化する表皮内電気刺激によって誘発される痛み関連体制感覚誘発電位(pSEPs)にどのような影響を与えるかを検討した.
  • 方法:健常成人25名を対象として,pSEPsの測定とNRSの聴取を10%濃度のL-menthol溶液およびコントロール溶液の塗布前後に行った.pSEPsの解析は国際10-20法に基づくCzを解析対象として,N2-P2複合振幅およびそれぞれの潜時を対象とした.
  • 結果:10%濃度のL-menthol溶液塗布の前後比較の結果,NRSに変化は見られなかったが,N2-P2複合振幅を減弱させ,N2潜時を遅延させた.
  • 結論:L-menthol溶液塗布によるTRPM8の活性化は,痛みに関与する神経活動を減弱させる効果があり,表皮内電気刺激に対しての主観的な痛み強度は変化させないことが示された.また,TRPM8がAδ線維に存在している先行研究の結果を支持するものとなった.

【文献抄読】

担当:佐々木さん

タイトル:Sensory processing sensitivity and somatosensory brain activation when feeling touch

出典:Schaefer et al., Sci Rep, 2022. 12(1):12024. DOI: 10.1038/s41598-022-15497-9

  • 目的:感覚処理感受性は,環境や社会的な刺激に対する高い感受性に関連する性格特性として説明されている.全人口の約15~20%が高感度であるとされている.そのような人は,微妙な刺激に対してより高い感受性を示し,それによって異なる体性感覚を示すという概念である.ここでは,感覚処理感度の高い人では,脳の感覚知覚が異なるという仮説を検証することを目的とする.
  • 方法:感覚処理感度を測定するために,ドイツ版のHighly Sensitive Person scaleを使用した.さらに,ビッグファイブ性格次元と特性共感性を評価した.感覚処理感受性の高い人では,感覚情報の脳の活動が異なるという仮説を検証するため,実験者の手に触れているときの参加者の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)でスキャンした.
  • 結果: その結果,感覚処理感受性は,神経症的傾向,開放性,共感性と正の相関があることがわかった.しかし,内向性は有意な予測因子ではなかった.神経画像データから,感覚処理感受性(関連する性格次元を制御)は,一次および二次体性感覚の脳活動と相関がなく,左後島皮質の脳活動と正の相関を示した.
  • 考察:感覚処理感受性は島皮質を介した感情タッチを表すと考えられると結論づけた.