4/24 勉強会

【研究報告】

担当:圓先生

タイトル:ハンセン病について

1. ハンセン病神経障害への電気刺激による神経筋再生治療と評価システムの開発

目的:ハンセン病における末梢神経障害の程度を神経伝達速度を用いて測定し,他の末梢神経損傷における疾患との比較を行うことで,ハンセン病における末梢神経障害の特異性について明らかにする.さらに,総合電流刺激装置(EMS)を用いた治療法により,残存している神経および筋肉を強化することで,機能の改善が図られていくかを科学的に解明する.

方法:今回は伊藤超短波株式会社製,低周波治療器・干渉電流型低周波治療器イトー ESPURGEを用いて治療を行った.治療はEMSモードにて筋収縮を引き起こして筋力増強を行った.その後マイクロカレント療法(MCRモード)で生体に微弱な電流を通電させ,筋肉の疲労軽減を行った.

結果と考察:現在,まだデータの収集中であるが,EMSによる治療によりほとんどの患者の筋に厚みが出てきている.また,筋肉の厚さの増大にともない,日常生活で支障をきたしていたADLに対して改善が見られている.ただし,筋肉の厚さの増大と動作の改善には相関が見られず,更なるデータの解析が必要である.このことから,今後基礎的データを蓄積していくことで,診断や予後予測についての新たな指標を作成していくことの出来る可能性を秘めていること及びEMSによる新たな治療法の可能性につながることが示唆されている.

2. ブルーリ潰瘍(M.ulcerans感染症)における無痛性病態メカニズムの解明
目的:ブルーリ潰瘍は,Mycobacterium ulcerans (M. ulcerans)感染によってひきおこされ,大きく深い無痛性の皮膚潰瘍が形成される.今回,M. ulceransが生成するMycolactoneのSW10(シュワン細胞)に対するアポトーシスの検出を行い,L929(線維芽細胞),J774(マクロファージ)との比較検討を行った.

方法:

1)SW10,L929及びJ774へのMycolactone投与

2) Western blotによるアポトーシスの検出

3) 蛍光抗体法によるアポトーシスの検出


結果:

1)Mycolactone投与による細胞形態の変化

L929では,実験開始48時間後までは全ての濃度においてほとんど変化は見られなかったが,SW10では,実験開始24時間後にはMycolactone A/B濃度30ng/mlでは細胞が萎縮して球形になり,培地上に多数浮遊してきており,細胞死が確認された.

2) Western blotによるアポトーシスの検出

L929では,Caspase-3,H2A.Xの発現は見られず,Tubulinは正常に発現していた.SW10では,Tubulinでは30ng/mlの48時間後においてバンドの消失が見られた.

3) 蛍光抗体法によるアポトーシスの検出

Mycolactone投与後12,24時間後のCaspase-3の細胞レベルにおける発現を比較したが,Mycolactone 30ng/mlの12時間後においてのみ,一部のSW10に発現を認めた.