3/27 勉強会

【研究報告】

担当:志賀さん

タイトル:位相特異的な経頭蓋交流電流刺激が空間性注意に与える影響

  • 目的:空間性注意をはじめとする認知機能は,異なる脳領域間の神経細胞同士のリズミカルな同期により媒介される.本研究の目的は,空間性注意に関わるとされる前頭-後頭葉領域への位相特異的(同位相刺激,逆位相刺激)な経頭蓋交流電流刺激(tACS)が空間性注意に与える影響を検証することを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人40名(α-tACS:20名,γ-tACS:20名)とし,空間性注意課題を実施しながらtACSを加え,刺激中の空間性注意を評価する.
  • 今後の予定:データの計測を実施し,位相特異的なtACSが空間性注意に与える効果を明らかにする.

【文献抄読】

担当:井上さん

タイトル:Cardiogenic control of affective behavioral state

出典:Hsush et al., Nature, 2023, DOI: 10.1038/s41586-023-05748-8

  • 背景:これまで,不安や恐怖による情動の変化が心拍や心拍知覚に変化を及ぼすとされてきた.しかしながら,実際の心拍の変化が我々の行動や情動の変化に影響を与えるかについては検討があまりなされていない.そのため,光遺伝学により心拍を変化させた際の行動の変化とそれに関連する脳領域の特定を目的とし,実験を行っていた.
  • 方法:マウスに対し,心臓特異的に光感受性タンパクであるチャネルロドプシンマインを発現させ,光による心拍制御を行う.その後,光刺激による頻脈によっておこる行動の変化を,高架式十字迷路試験・オープンフィールド試験・オペラント条件付け試験を用いて測定する.また,光刺激による頻脈による脳の活性部位を全脳イメージングにて観察.上記の方法にて活性化した脳領域(後島皮質)に対し,光遺伝学的な抑制を行うことによる不安行動の変化を観察した.
  • 結果:光刺激による頻脈の誘発はそれぞれの試験において不安行動を増大させた.活性化脳領域として島皮質・前頭前野・脳幹が観察された.後頭皮質の光遺伝学的抑制は,光誘発性頻脈による不安行動を減少させた.
  • 結論:今回,非侵襲的な心拍制御を行う方法を開発した初めての研究である.先行研究と本研究の結果から,後島皮質が内受容と情動において因果的な役割を果たす可能性があることを示唆した結果となった.