2/6 勉強会

【研究報告】

担当:高橋先生

タイトル①:ラット骨格筋におけるリンパ管の詳細分布と加齢変化による影響

  • 背景・目的:骨格筋においては,成長や加齢に伴い筋線維タイプの速筋化や遅筋化,毛細血管の増減が生じるが,毛細リンパ管の詳細については明らかにされていない.そこで,本研究の目的は,ラット骨格筋における毛細リンパ管数の加齢の影響による変化を明らかにする.
  • 方法:対象はSD系雄性ラット18匹とし,4週齢・13週齢・1.5年齢でサンプリングを行い,各TA・EDL・SOLを採取した.右後肢から得られた各筋は,組織学的検討をするためLYVE1・CD31・Dystrophinに対し免疫組織化学染色を施す予定で条件検討中である.また,左後肢から得られた各筋は,LYVE1,VEGF-Cなどの遺伝子発現状況を確認するため,PCRにて検証を実施する予定である.

タイトル②:SPring-8を利用したアキレス腱付着部の3次元構造変化とその力学的特性

  • 背景・目的:我々はこれまで,アキレス腱付着の構造に着目し,成長に伴いアキレス腱・骨付着部の波状構造が成長に伴い変化することを組織学的に明らかにしてきた.本研究の目的は,成長に伴う構造変化を3次元的に明らかにし,その力学的特性との関連性を明らかにすることである.
  • 方法:実験動物には,4・6・8・12週齢の雄性Wistar系ラットを使用した.アキレス腱付着部の3次元構造については,大型放射光施設(SPring-8)のBL20B2を利用し撮影した.使用エネルギーは25kevとし,0.1°毎に画像を取得した.得られた画像からは,成長に伴い波状構造が複雑する様子が確認でき,現在3次元構築ならびに構造解析を実施している.力学的特性についても,同週齢ラットを用いて引張試験の条件検討を行っている最中である.今後は,これら構造変化と力学的特性の相関関係などからその関係性を明らかにしていく予定である.

【文献抄読】

担当:井上先生

タイトル:Effectiveness of home-based exercise delivered by digital health in older adults: a systematic review and meta-analysis

出典:Solis-Navarro et al., Age Ageing. 2022. DOI: 10.1093/ageing/afac243.

  • 背景:習慣的な運動は高齢者の身体機能を維持・改善するために重要であるが,デジタルヘルスによる効果は明確ではない.本研究の目的は,デジタル技術を使用したホームエクササイズが身体機能や健康関連QOL,転倒減少に与える効果をシステマティックレビューとメタアナリシスで明らかにすることとした.
  • 方法:65歳以上の地域在住高齢者を対象にデジタル技術(インターネットや電話連絡,ビデオゲームなど)を使用し,主に運動介入を行なったRCTを包含したシステマティックレビューおよびメタアナリシスとした.メインアウトカムは身体機能,副次的アウトカムは健康関連QOL,転倒とした.
  • 結果:26研究,5133名が対象となった.デジタル技術を使用した運動介入の結果,5回椅子立ち上がりテスト(−0.56 sec, 95% CI −1.00 to −0.11; P=0.01),Barthel Index (+5.01 points, 95% CI 0.24–9.79; P=0.04),健康関連QOL (SMD 0.18; 95% CI 0.05–0.30; P=0.004)が有意に改善し,転倒(odds ratio, OR 0.77, 95% CI 0.64–0.93; P=0.008)が有意に減少した.
  • 結論:本研究によって,高齢者に対するデジタル技術を使用した運動介入は,下肢筋力,ADL,健康関連QOLの向上,転倒の減少に寄与することが明らかになった.