1/16 勉強会
【研究報告】
担当:星先生
タイトル:筋力トレーニングが皮質-筋コヒーレンスに及ぼす影響
- 背景・目的:筋力トレーニングは,大脳皮質内の抑制機構を減弱させるとともに,一次運動野の興奮性を高めることが明らかになっている.一方で,末梢では筋力発揮時における運動単位の発火頻度を変化させることが明らかになっているが,皮質活動と筋活動間の相互関係については明らかになっていない.本研究では,単回の筋力トレーニングが皮質-筋間の機能的結合性(皮質-筋コヒーレンス)に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
- 方法:健常成人2名を対象に計測を行った(今後は30名を対象に計測予定).皮質-筋コヒーレンスの評価には,30%MVCでの右肘関節等尺性屈曲動作中における上腕二頭筋の筋活動および,64ch脳波計で計測された皮質活動(対象:C3領域)を用いた.また,介入前後に最大努力での右肘関節等尺性屈曲動作を実施し,最大筋力も計測した.筋力トレーニング介入は80%MVCでの右肘関節等尺性屈曲動作とし,10回×3セット実施した.解析対象は介入前後の最大筋力およびβ帯域(15-35 Hz)の皮質-筋コヒーレンスの振幅値とし,介入前後で比較した.
- 結果:被験者1では介入後に最大筋力が低下し,β帯域の皮質-筋コヒーレンスの最大振幅値が低下した.被験者2では介入後に最大筋力が増加し,β帯域の皮質-筋コヒーレンスの最大振幅値が低下した.
- 結論・今後:筋力トレーニングはβ帯域の皮質-筋コヒーレンスに影響を与えることが示唆された.今後は被験者数を増やし,解析を進めていく予定である.
【文献抄読】
担当:平塚さん
タイトル:A step towards dynamic foot classification: Functional grouping using ankle joint frontal plane motion in running
出典:Chalmers et al., Gait Posture. 2022 DOI:10.1016/j.gaitpost.2022.07.005
- 背景:静的な足部分類は,構造が機能を決定することを前提としている.しかし,静的な足部タイプと動的な動作との関連性が弱いため,その妥当性が疑問視されている.そのため,動的評価や機能的動作に基づく足部分類が求められているが,検討されている研究は数少ない.そこで,ランナーのグループ内で,足関節前額面の運動におけるサブグループは存在するかを検討した.
- 方法:健常成人のグループ(n=42)における裸足ランニング時の足関節前面上の運動パターンに対してk平均クラスタリング分析を行い,機能的なグループを同定した.同定後,Statistical parametric mappingにより,ランニング立脚期におけるクラスタ間の足関節前額面上の関節角度を比較した.決定されたクラスタは,動的な足部タイプを決定するために使用された.クラスタ分析により,新たに定義された足部タイプとFoot posture index(FPI-6)の一致度を分析した.
- 結果:クラスタ分析により,2つのクラスタが同定された.関節運動の波形を解析した結果,クラスタ1はクラスタ2と比較して,立脚期の0%から97%の間で足関節外がえし角度が有意に小さく(p<0.001),クラスタ間の差は大きな効果量(g>1)を伴うことが確認された.これらの結果に基づき,クラスタ1はNeutral Dynamic Foot Type(Neutral DFT),クラスタ2はPronated Dynamic Foot Type(Pronated Dynamic DFT)と定義された.新たに定義した足部タイプの指標は、FPI-6とわずかな一致(κ=0.08)であった.
- 考察・結論:ランニング時の足関節の動きから直接,ランナーの足部タイプを分類した.動的分類と静的分類の一致度が低いことは,これらの評価が類似していないことをさらに証明するものである.この結果は,ランニング時の足部の特徴を調べる際の静的分類の妥当性に疑問を投げかけ,足部の機能的反応を反映するためには動的評価がより適切であることを示唆するものである.