12/26 勉強会
【研究報告】
担当:渡邉 (拓) さん
タイトル:急性期脳卒中症例に対する反復的体性感覚刺激が体性感覚機能および体性感覚誘発脳波に及ぼす影響の検証
- 目的:急性期脳卒中症例に対する反復的体性感覚刺激が体性感覚機能および体性感覚誘発脳波に及ぼす影響を明らかにする.
- 方法:①健常成人に対する高頻度(20Hz),低頻度(1Hz)反復的体性感覚刺激介入が体性感覚誘発脳波に及ぼす影響
- 健常成人を対象に,反復的体性感覚刺激(Repetitive Somatosensory Stimulation; 以下RSS)介入前後の体性感覚誘発脳波(Somatosensory evoked potentials; 以下SEP)を記録した.RSSは正中神経を電気刺激することで実施した.RSS介入条件は,20Hz条件,1Hz条件の二条件とした.両介入条件の電気刺激強度は運動閾値直下とし,Duty cycleは1秒刺激/5秒休息とし,刺激時間は20分間とした.SEPは,正中神経刺激により誘発し,誘発刺激頻度は1Hz,計測時間は5分間とした(誘発刺激回数は合計300回).SEPの解析は,誘発刺激の-50msec~200msecでEpochingし,目視にてノイズが含まれたepochは除去したのちに,加算平均処理を行うことでSEP波形を算出した.得られたSEPからN20.P25,P45成分を同定し,それぞれBaseline to peak値を算出した.
- ②右中大脳動脈領域の脳梗塞後のSEPの経時的変化
- 脳梗塞後にrt-PA静注+血栓回収術を施工した症例を対象にSEP計測を縦断的に実施した(計測日は発症+7日,13日時点).SEP計測方法は報告内容1と同様であり,両側(麻痺側と非麻痺側)のSEPを計測した.
- 結果:①現在2名のみのデータだが両条件ともにN20は減少傾向,P25・P45は増大傾向である結果が得られている.②X+7日時点で麻痺側と非麻痺側のSEP波形は非対称性を示した(麻痺側N20は低値だがP45は著明に高値)が,その非対称性は経時的に改善傾向であった.
- 結論:脳卒中症例を対象としてSEP計測を実施可能な環境は整った.健常人を対象としたRSS介入効果検証と並行して,脳卒中症例を対象とした臨床研究も進めていきたい.
【文献抄読】
担当:巻渕さん
タイトル:Improved acquisition of contact heat evoked potentials with increased heating ramp
出典:De Schoenmacker et al., Sci Rep. 2022 DOI:10.1038/s41598-022-04867-y
- 背景:接触熱誘発電位(CHEP)は,侵害受容性神経軸を調査するための客観的かつ非侵襲的な測定法である.CHEPの臨床的価値は,主に末梢神経障害や脊髄病変の診断向上である.近年の技術進歩により,接触温熱刺激の加熱ランプを増加させることが可能となったため,加熱ランプによる影響を体系的に調査した.
- 方法:健常者30名を対象に,4種類の加熱ランプ(150℃/s,200℃/s,250℃/s,300℃/s)で手と足に接触熱刺激を与え,ピーク温度60 ℃に到達させる実験を行った.
- 結果:N2-P2波形の振幅,潜時,S/N比が変化することがわかった.加温ランプを速くすると,手背と足背への刺激でCHEPの潜時が減少した(手:F = 18.41, p < 0.001; 足:F = 4.19, p = 0.009 ).足背のみの刺激では,加熱ランプを速くすると,S/N比(F = 3.32, p = 0.024)およびN2振幅(F = 4.38, p = 0.007)が増加した.
- 結論:本研究の結果から,CHEPの臨床応用において,約250℃/sの速い加熱ランプの採用を検討すべきことを示唆する.また,生理学的な観点から,本研究はCHEPs を十分に獲得するために,求心性の末梢同期が重要であることを示す.