研究内容の概要:
一次体性感覚野は触覚情報を処理する大脳皮質領域のひとつですが,運動学習にも深く関与しています.我々に研究グループは,運動学習課題を行うことで一次体性感覚野の興奮性が増大することに加えて,一次体性感覚野の抑制機能が増強することを明らかにしました.本研究成果は国際誌『Frontiers in Neuroscience』に掲載されます.
研究者からのコメント:
マインさんからのコメント
新潟医療福祉大学大学院の博士課程修了後も大西先生,齊藤先生をはじめとした神経生理Labの先生方とともに研究を続けてきました.その研究成果がFrontiers in Neuroscience誌に掲載されることになり,大変嬉しく思います.研究を進めるうえで大西先生をはじめとした神経生理Labの先生方にご指導いただいたこと,研究を実施するうえで大学院の友人たちがサポートしてくれたことを心から感謝しています.
齊藤からのコメント
今回の研究では,運動学習によって一次体性感覚野の興奮性が変化することが示されました.運動学習では一次運動野などの運動に関連する皮質領域が注目されることが多いですが,一次体性感覚野も重要な役割を担っていることが明らかになりました.今後,運動学習を促進するために一次体性感覚野へのアプローチを検討していきたいと考えています.
本研究成果のポイント:
①視覚追従課題を用いた運動学習が一次体性感覚野の興奮性および一次体性感覚野の抑制機能にもたらす効果を検証しました.
②難易度の高い視覚追従課題(Complex visuomotor task)と難易度の低い視覚追従課題(simple visuomotor task)ともに運動学習が生じるが,Complex visuomotor taskのほうが運動学習が生じやすい結果となりました.
③難易度の高い視覚追従課題を行うことで,一次体性感覚野の興奮性(N20/P25 amplitude)は増大し,一次体性感覚野の抑制機能(SEP-PPD ratio)は増強しました.
原論文情報:
Manh Van Pham, Kei Saito, Shota Miyaguchi, Hiraku Watanabe, Hitomi Ikarashi, Kazuaki Nagasaka, Hirotake Yokota, Sho Kojima, Yasuto Inukai, Naofumi Otsuru, Hideaki Onishi. Changes in Excitability and GABAergic Neuronal activity of the primary somatosensory cortex after motor learning. Frontiers in Neuroscience (2022)