研究内容の概要:
脳卒中後の後遺症として、筋出力の調整や関節位置覚に障害が生じる事が知られており、これらの機能には、後頭頂葉と呼ばれる脳領域が関与する事が明らかになっています。そこで本研究では、後頭頂葉に対して、脳活動を変調させるとされる経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を与えた際の下肢の運動機能および関節位置覚を検証しました。その結果、後頭頂葉へのtDCS後に下肢の運動機能および関節位置覚が向上することが認められました。本研究成果は、「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載予定です。
研究者からのコメント:
本研究は、後頭頂葉に対するtDCSが運動機能および関節位置覚を向上させる可能性を示唆しました。運動機能はもちろん、感覚機能の低下は患者様の歩行機能等の日常的な生活動作に大きく影響を及ぼすとされています。今後は、神経生理学的な測定も行い、変化のメカニズムに関しての検証を進めていきます。そして、運動機能や感覚機能が低下した患者様へのリハビリテーションへ応用できる手法としての確立を目指します。
本研究成果のポイント:
①健常成人15名を対象に、後頭頂葉に対するtDCS介入が、足関節の運動機能(視覚追従課題)と関節位置覚(関節位置覚課題)に及ぼす影響を検証した。
②後頭頂葉へのtDCS介入後において、視覚追従課題および関節位置覚課題成績が向上した。
原論文情報:
Kamii Y, Kojima S, Onishi H. Transcranial Direct Current Stimulation over the Posterior Parietal Cortex Improves Visuomotor Performance and Proprioception in the Lower Extremities. Frontiers in Human Neuroscience. In press.