5/23 勉強会

【研究報告】

担当:高見澤さん(M2)

タイトル:糖尿病が骨格筋微小循環における酸素移動に与える影響

  • 背景:運動時に骨格筋への酸素供給は劇的に増加する.しかし,糖尿病では血管の構造的および機能的悪化が生じ,酸素供給に障害をきたす可能性がある.
  • 目的:糖尿病が骨格筋収縮時の組織酸素分圧に与える影響を検証した.
  • 方法:Wistar系雄性ラットを糖尿病群(DM群)と偽介入群(Sham群)の2群に分けた.DM群はストレプトゾシン(50mg/kg)の腹腔内投与により糖尿病を発症させ,Sham群は生理食塩水を投与した.長趾伸筋に電極を留置し,電気刺激(1Hz, 2ms, 6V, 180s)によって筋収縮を誘発した.リン光クエンチング法により微小血管内の酸素分圧(PO₂mv)と間質の酸素分圧(PO₂is)をそれぞれリアルタイムかつin vivoで計測した.得られた結果からΔPO₂を算出(PO₂mv-PO₂is)した.
  • 結果:DM群はSham群と比較して安静時のPO₂mvおよびΔPO₂は有意に高値を示した(P<0.05).PO₂isは2群間で有意な差はなかった.
  • 結論:糖尿病病態下では骨格筋微小血管内酸素分圧は増加し,血管内外における酸素移動の原動力であるΔPO₂も増加することが明らかとなった.

【文献抄読】

担当:太田先生

タイトル:A spinal microglia population involved in remitting and relapsing neuropathic pain

出典:Kohno et al., Science, 2022 doi: 10.1126/science.abf6805

  • 目的:神経障害性疼痛の回復過程に関わる脊髄ミクログリアサブセットとその鎮痛機構を明らかにする.
  • 結果:(1)CD11c陽性ミクログリアが末梢神経損傷モデルマウスの痛みの回復時期に増えていること,その遺伝学的除去操作により当ミクログリアが痛みの回復に関与することが分かった.(2)網羅的遺伝子発現解析の結果,本処置によりCD11c陽性ミクログリアで顕著に増加する遺伝子がいくつか抽出され,そのうちインスリン様成長因子(IGF)-1が本モデルの痛みの回復過程に関与することが分かった.(3)CD11c陽性ミクログリアが神経損傷後の貪食に関与し,Axl受容体がIGF-1発現の上流で関与することが分かった.(4)損傷後の痛みが回復した後におけるCD11陽性ミクログリアおよびIGF-1阻害実験により,これらが神経障害性疼痛の回復後においても痛みの軽減に作用していることが分かった.
  • 結論:CD11c陽性ミクログリアは神経障害性疼痛の回復時期において,Axl受容体を介して髄鞘残骸を貪食し,その後当ミクログリアから分泌されたIGF-1によって鎮痛がもたらされると考えられた.本知見は本症に対する新たな鎮痛ターゲットとして期待される.対する注意処理や抑制機能を変化させる。