歩行練習方法の違いによる歩行適応中の神経生理学的変化を明らかにしました!

北谷亮輔助教(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)の研究論文が国際誌『Experimental Brain Research』に採択されました!

 

研究内容の概要:

ヒトの歩行は環境や課題の変化に応じて適応することが可能であり、歩行の適応能力を活用した歩行練習が近年注目されています。効率的な歩行適応を促すために練習方法の違いによる影響が検討されていますが、その時の神経生理学的指標を検討した報告は多くありません。そこで、本研究では歩行適応方法の違いによる影響を筋電図コヒーレンスという解析手法を用いて検討しました。その結果、外力が急に加わる環境ではコヒーレンスが増大し、外力が徐々に加わる環境ではコヒーレンスが増加することなく、同程度の歩行適応が生じることが確認されました。筋電図コヒーレンスは一次運動野などの大脳皮質の活動を反映するとされており、本研究の結果から、徐々に変化する環境下では大脳皮質の活動の増加を必要とすることなく、歩行適応が可能である可能性が示唆されました。

 

コメント:

中枢神経疾患を呈する患者は歩行適応が生じにくいことが報告されており、歩行適応中の神経生理学的背景を解明することは非常に重要となります。本研究から中枢神経疾患を呈する患者などに対して歩行練習方法を選択する際には、練習中の神経生理学的変化についても考慮する必要があることが示唆されました。

 

研究成果のポイント:

若年健常者を対象にトレッドミル歩行中に右足部を後方に牽引する歩行適応課題を2条件実施しました。歩行適応開始時(EA)に外力が急に加わる環境(Abrupt条件)では右側の前脛骨筋におけるコヒーレンスが増大し、歩行適応が進むにつれて(EAからLAへ)減少する一方、外力が徐々に加わる環境(Gradual条件)では右側の前脛骨筋におけるコヒーレンスにはバラツキはあるものの有意な変化が見られませんでした。

 

また、Abrupt条件では歩行適応開始時にコヒーレンスが増加した後に減少する変化量が歩行適応中の遊脚時間対称性の変化量と相関し、Gradual条件では歩行適応開始時にコヒーレンスが増加した者ほど遊脚時間が非対称的となる相関関係が確認されました。

原著論文情報

Kitatani R, Maeda A, Umehara J, Yamada S. Different modulation of oscillatory common neural drives to ankle muscles during abrupt and gradual gait adaptations. Experimental Brain Research. In press.