12/20 勉強会

【研究報告】

担当:大野

タイトル:グリシンCEST-MRイメージング法の開発とアルツハイマー病モデルマウスへの応用

  • 背景・目的:合失調症やアルツハイマー病などの精神・神経疾患の一因として、N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体機能の障害が報告されている。NMDA受容体の開口にはグルタミン酸とともにグリシンの結合が必要であり、アルツハイマー病患者では脳内グリシン濃度が変化することが報告されている。脳内のグリシン分布を測定できれば、精神・神経疾患の病態解明に繋がる可能性がある。MRI撮像対象である水分子のプロトンの信号強度により間接的に代謝物を評価する手法として化学交換飽和移動法(CEST)がある。この手法により、高感度に脳内のグリシン分布を観測できる可能性がある。本研究の目的は、CEST-MRIを用いてグリシン濃度を反映した画像を得る手法の検討および生体におけるグリシンイメージング法としての妥当性を評価する事である。
  • 方法:MRI撮像には7 Tマグネットを有したVarian Unity-INOVA-300 systemを用いた。濃度0、2.5、5、7.5、10 mMのグリシン溶液をガラス管に封入し撮像条件設定を行った。次にWTマウスとしてC57BL/6マウス、ADモデルマウスとして5xFADマウスを使用し測定を行った。また、生化学的な測定法である高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて抽出脳の定量解析を行った。
  • 結果・考察:グリシン溶液の濃度とCEST効果は相関し、本手法でグリシン濃度を反映した画像を取得可能であった。C57BL/6マウスでは、大脳皮質よりも視床の方が有意にCEST効果が高く、この結果は生化学測定結果と一致した。5xFADマウスのCEST効果はWTマウスと比較し有意に低下した。
  • 結論:ADモデルマウスにおける脳局所グリシン濃度の低下をCEST-MRIにより検出し得た。

 

【文献抄読】

担当:一杉

タイトル:筋収縮中のラット脊柱僧帽筋酸素分圧における肺高血圧症の影響

出典:Schulze KM et al. The effects of pulmonary hypertension on skeletal muscle oxygen pressures in contracting rat spinotrapezius muscle. Exp Physiol. 2021 Oct;106(10):2070-2082. doi: 10.1113/EP089631. PMID: 34469618.

  • 目的:酸素供給と需要の関係によって示される肺高血圧症における運動耐用能低下の潜在的なメカニズムを明らかにする。
  • 方法:雄性SDラットを肺高血圧症モデルと健常対照群に無作為に群分けした。また、安静時から筋収縮時における脊柱僧帽筋の間質酸素分圧をりん光クエンチング法を用いて測定した。
  • 結果:肺高血圧症ラットでは健常ラットと比較して、筋収縮への代謝移行時の初期30秒間における酸素供給と酸素需要のマッチングが損なわれていた。
  • 結論:肺高血圧症は、ラット脊柱僧帽筋の収縮開始後の骨格筋の酸素供給と需要の動的なマッチングを損なう。これらの結果は、肺高血圧症に見られる酸素摂取量の動態と運動耐用能の低下に血管機能障害が関与していることを示唆している。