11/8 勉強会
【研究報告】
担当:丸山
タイトル:月経周期異常を有する女性における関節弛緩性の変化
- 背景:膝前十字靭帯(ACL)損傷の発生率は男性と比較して女性で高く,月経周期においては卵胞期や排卵期にACL損傷の発生が多い.この性差やACL損傷の発生時期の違いは,周期的に変動する女性ホルモンが影響していると考えられている.ACL損傷の危険因子の一つとして,膝前方弛緩性(Anterior Knee Laxity:AKL),全身関節弛緩性(General Joint Laxity:GJL),反張膝(Genu Recurvatum:GR)などの関節弛緩性が含まれており,月経周期における関節弛緩性の変化について多くの研究が行われている.しかし,月経不順を有する女性を対象には検討されていない.
- 目的:健常女子大学生を対象に,月経正常群および月経不順群における関節弛緩性の周期的変化と差異を検討すること.
- 方法:対象は健常女子大学生19名とし,月経正常群11名と月経不順群8名に分類した.AKL,Stiffness,GJL,GRの測定は,月経周期を卵胞前期,卵胞後期,排卵期,黄体期の4期に区分し,各期に連続2日間,計8回の測定を行った.統計解析については,分割プロットデザイン分散分析(対象要因×周期要因)を用いて,AKL,Stiffness,GJL,GRの群間および各周期間の比較を行った.
- 結果:AKL,GJL,GRに関しては,有意な交互作用,主効果は認められなかった.Stiffnessに関しては,89-111Nおよび111-133NにおけるStiffnessで有意な対象要因の主効果のみが認められ,月経正常群と比較して月経不順群のStiffnessが有意に高値を示した.
- 考察:正常月経の女性は月経不順の女性よりも,関節の終末剛性が低く,ACL損傷のリスクとなり得る可能性が示唆された.
【文献抄読】
担当:舎川
タイトル:月経周期と経口避妊薬が筋パフォーマンスと知覚へ与える影響
出典:Belinda et al., Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18, 10565. https://doi.org/10.3390/ijerph182010565
- 目的:女性の多くは,月経周期や経口避妊薬(OC)の使用により,変動するホルモンの影響を受けている.本研究では,月経周期と単相性の経口避妊薬の服用が,筋力パフォーマンスと知覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
- 方法:活動的な女性30名(月経群:12名,高アンドロゲン性OC群:10名,低アンドロゲン性OC群:8名)を対象に,月経周期またはOCの1周期を通して3回の測定を行った.Counter movement jump(CMJ),両側ジャンプ,ハンドグリップ力,等尺性膝伸展筋力,等速性膝屈曲・伸展トルクを評価した.知覚的評価には気分,疲労,筋肉痛,痛みを記録した.
- 結果:ほとんどの変数は,月経周期やOCの周期に応じて有意な変化を示さなかった.しかし,月経周期群では等速性膝伸展トルク(240°/s),CMJと両側ジャンプの滞空時間が卵胞後期と比較して黄体期で良好な結果が認められた.高アンドロゲン性OC群では,等速性膝伸展トルク(240°/s)がEarly hormone期と比較してLate hormone期で有意に高値を示した.低アンドロゲン性OCではCVJの滞空時間がEarly hormone期と比較してLate hormone期で有意に低値を示した.
- 結論:月経周期の黄体期では筋パフォーマンスの向上が認められ,周期に応じたトレーニングをすることが有益である可能性がある.高アンドロゲン性OCの外因性ホルモンの増加は高速性の筋力に良い影響を与えることを示唆している.