10/11 勉強会

【研究報告】

担当:小島翔

タイトル:空間的刺激位置が異なる機械的触圧覚刺激を用いたPaired Pulse Depressionと二点識別覚機能との関連

  • 目的:末梢刺激時の皮質反応は,短い間隔で2連発刺激を行うと1発目の反応に比べ,2発目の反応が減弱することが報告されており,これは,Paired pulse depression(PPD)という.本研究では,2連発刺激の刺激位置の違いがPPDの減弱度合いに及ぼす影響を明らかにすることと,PPDの減弱度合いと2点識別覚閾値との関連を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人20名であった.PPDの計測には,全頭型脳磁界計測装置を用いて,右示指に対する触覚刺激後の皮質活動を計測した.計測条件は,1発刺激(single)と刺激位置が異なる2連発刺激(PPD_normal,PPD_near,PPD_middle,PPD_far)の合計5条件とし,各200回をランダムに計測した.また,2点識別覚閾値は,右示指の指腹で計測を行い,50%の確立で正答できる2点間隔を算出した.
  • 結果:誘発波形の大きさは,single時に比べて全ての2連発刺激時で有意に小さく,PPDが認められた.しかしながら,抑制度合いの比較では,2連発刺激条件間で有意な差が認められなかった.一方,PPD_far条件の抑制度合いと2点識別覚閾値との間に有意な負の相関が認められた.
  • 結論:2連発刺激の刺激位置の違いは,PPDの抑制作用に影響を及ぼさない可能性が示唆された.一方,空間的に距離が異なる条件でのPPD抑制度合いは,個人の二点識別覚機能を反映する可能性が示唆された.

 

【文献抄読】

担当:神居

タイトル:Acute Effects of High-Definition Transcranial Direct Current Stimulation on Foot Muscle Strength, Passive Ankle Kinesthesia, and Static Balance: A Pilot Study

出典:Xiao et al., Brain Sci. 2020, 10(4), 246. https://doi.org/10.3390/brainsci10040246

  • 背景と目的:高解像度経頭蓋直流電気刺激(HD-tDCS)は電極直下の領域に焦点的に電界を発生させることができる.一方,運動および感覚機能に対する効果は不明である.そこで,本研究の目的を,HD-tDCSが足部筋力,関節位置覚,静的立位バランス能力に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は健常成人14名とし,すべての被験者に対して2つの介入条件(HD-tDCS条件,疑似刺激条件)の実験を行った.HD-tDCS条件では,一次運動野および一次体性感覚野の下肢領域を対象に,2mAの強度で20分間の刺激を実施した.疑似刺激条件は,60秒間の刺激のみとした.刺激前後で中足趾節関節および足趾最大屈曲筋力,受動的な足関節の運動方向弁別閾値,両脚および片脚立位時の重心移動速度を測定した.
  • 結果:両条件で,介入前に比べ介入後で,受動的な足関節の運動方向弁別閾値,片脚立位時の重心移動速度の低下が認められた.
  • 結論:HD-tDCSは,受動的な足関節関節位置覚,静的バランス能力を改善させる可能性が示唆された.