8/30 勉強会

【研究報告】

担当:藤本

タイトル:低二酸化炭素血症がヒトの常体温時の皮膚温度感覚に及ぼす影響に関する研究

  • 目的:様々なストレス負荷時に生じる過換気反応は、血中の二酸化炭素 (CO2) の過剰排出による脳への血流供給の低下を引き起こす。本研究では、過換気による低CO2血症が皮膚温度感覚に及ぼす影響を検討することを目的とした。
  • 方法:健康な成人15名(26±3歳)を対象とした。1) 安静条件 (Con条件)、2) 過換気条件 (HH条件) および3) 過換気+CO2吸入条件 (NH条件) の3条件において、温度感覚閾値測定器を用いて局所皮膚温度感覚を評価した。HH条件では自発的過換気 (呼吸数: 30 bpm、一回換気量: 0.8-1.7 L) を行うことで呼気終末CO2分圧を低下させ、NH条件では自発的過換気を行いながらCO2を吸入することでCon条件と同程度の呼気終末CO2分圧を維持した。
  • 結果:呼気終末CO2分圧および中大脳動脈平均血流速度はHH条件でCon条件およびNH条件よりも低値を示した。局所皮膚温覚閾値はHH条件でNH条件よりも高値を、局所皮膚冷覚閾値はHH条件でNH条件よりも低値を示した。
  • 結論:動脈血CO2分圧低下は局所皮膚温度感覚を鈍化させることが示唆された。

 

【文献抄読】

担当:堀田

タイトル:⼈⼯呼吸器管理は横隔膜の抵抗⾎管における⾎管拡張能を障害する

出典:Horn et al. Impaired diaphragm resistance vessel vasodilation with prolonged mechanical ventilation. J Appl Physiol 127(2):423-431, 2019. doi: 10.1152/japplphysiol.00189.2019.

  • 背景:人工呼吸器を必要とする呼吸不全患者は年々増加している.長時間の人工呼吸器管理は,横隔膜の萎縮,機能低下,および酸化ストレスを惹起する.横隔膜の機能障害を引き起こす要因として横隔膜への血流障害と,横隔膜を栄養する細動脈の機能低下が候補として挙げられる.
  • 目的:本研究の目的は,6時間の⼈⼯呼吸器管理が,横隔膜の細動脈機能に与える影響を明らかにすることである.
  • 方法:雌性Sprague-Dawley rat(⽉齢4-8ヶ⽉,体重~350g)を対象に,横隔膜から細動脈を摘出し,血管の反応性を評価した.人工呼吸器の設定は動脈血ガス分析の結果が正常な値となるよう調整した.コントロール群はアセチルコリン(ACh)に対する血管拡張反応をそれぞれ評価した.
  • 結果:コントロール群と比べて6時間の人工呼吸器管理後(人工呼吸器管理群)の血流依存性血管拡張反応は有意に低値を示した.AChに対する血管拡張反応は,コントロール群と比べて人工呼吸器管理群で有意に低値を示したが,内皮型一酸化窒素合成酵素の阻害薬であるL-NAME投与後にこの差は消失した.内皮非依存性の血管拡張を引き起こすニトロプルシドナトリウムに対する血管拡張反応も,コントロール群と比較し人工呼吸器管理群において有意に低値を示した.
  • 考察:⼈⼯呼吸器管理によりラット横隔膜の⾎管拡張能は障害された.⾎管拡張能はeNOS依存性と非依存性の両方で障害されていた.この結果は,⻑期間の⼈⼯呼吸器管理が横隔膜機能障害と離脱困難に影響する可能性を⽰している.
  • 結論:6時間の⼈⼯呼吸器管理は,⾎管内⽪依存性および⾮依存性の経路で⾎管機能障害を惹起する