6/7 勉強会

【研究報告】

担当:高林

タイトル:数理モデルを用いたシミュレーションによる膝蓋大腿関節ストレスの性差

  • 目的:代表的なランニング障害に膝蓋大腿関節痛症候群(PFPS)があり,その発症率は女性が男性と比較して約2倍高いことが報告されている.PFPS発症の危険因子のひとつとして,膝蓋大腿関節のストレス(PFJS)の増加が考えられている.そのため,PFPSの発症率の性差の理由を明らかにするために,先行研究ではランニング中のPFJSの性差が検証されているが,いまだ一定の見解は得られていない.本研究は,先行研究の遺体データをもとに,膝蓋骨と大腿骨の接触面積を様々な膝関節屈曲角度で男女別に計算し,数理モデルを用いてシミュレーションによるPFJSの性差を検証することを目的とした.
  • 方法:本研究は数理モデルを用いてPFJSのシミュレーション解析を実施した.角度は10-45°で男女共通,関節モーメントは男性と女性でそれぞれ0-240Nmと0-220Nmでシミュレーション条件を規定した.多項式を用いて膝関節角度から大腿四頭筋のレバーアームを計算した.つぎに膝関節モーメントをレバーアームで除すことで大腿四頭筋張力を求め,大腿四頭筋張力から膝蓋大腿関節圧迫力を計算した.最終的に,膝関節角度から膝蓋骨と大腿骨の接触面積を求め,膝蓋大腿関節圧迫力と接触面積からPFJSを計算した.接触面積は先行研究の遺体データをもとに,3次の多項式近似で計算した男女別での接触面積を用いた.
  • 結果:男女ともに,膝関節伸展モーメントと屈曲角度が最大のときに,PFJSも最大値を示した.しかしPFJSの最大値は男女で異なっており,女性(18.5 N/mm2)は男性(14.9N/mm2)と比較して高値を示した.
  • 結論:本研究より,性別に特異的な膝蓋骨と大腿骨の接触面積を使用してPFJSを計算することで,女性は男性と比較してPFJSが増加することが明らかになった.

 

【文献抄読】

担当:五⼗嵐(眸)

タイトル:Brain oscillations differentially encode noxious stimulus intensity and pain intensity

出典:Moritz M. Nickel et al.,Neuroimage 2017 Mar 1

  • 背景:侵害刺激は末梢での入力の後,様々な脳領域で処理され,痛みとして知覚される.しかし,侵害刺激強度と痛みの知覚強度それぞれでどのような脳活動が生じるかは不明.
  • 方法:脳波計測を使用して,健康な被験者(n=39)の侵害刺激強度の変化および痛み知覚強度の変動によって誘発された反応を調査した.被験者には,右手と左手の背側部それぞれに10分間侵害刺激を実施した.右手への刺激と左手への刺激によって活動する脳領域が異なるかも併せて検討した.
  • 結果:侵害刺激強度は侵害刺激と反対側の感覚運動野のα・β帯域活動の減弱によってコード化され,痛みの主観的知覚強度は内側前頭前野のγ帯域活動の増大によるコード化が示された.
  • 結論:侵害刺激強度は刺激部対側の感覚運動野におけるα・β帯域活動が関与しており,痛みの主観的知覚強度については,刺激部位に依存せず内側前頭前野のγ帯域活動が関与することを示唆している.