4/5 勉強会

【研究報告】

担当:高橋

タイトル:ラット坐骨神経切除後のEnthesisにおけるコラーゲンとVEGFの変化

  • 目的:これまで,われわれはEnthesisのコラーゲン構造が力学的ストレスの影響を受けることを経時的に明らかにしてきた.加えて,力学的ストレスの減弱により血管様の侵入を組織学的に確認している.そこで,本研究では坐骨神経切除による不活動モデルラットを用い,力学的ストレス減弱がEnthesisコラーゲン分布ならびに血管新生に及ぼす影響について検証した.
  • 方法:坐骨神経切除群(DN群,n=12),Sham群(n=12)に振り分けた.各群は処置から2週後,4週後にサンプリングを実施し免疫組織化学染色(抗2型コラーゲン,抗VEGFA抗体)を施した.
  • 結果:観察の結果,2型コラーゲンについては大きな差異を認めなかった.VEGFについては,DN群において多く発現している様子が観察された.
  • 今後の展望:今後は1型コラーゲンやCD34なども含めながら血管新生とコラーゲン変化の関係性について,より詳細に検証を進めていく.

 

【文献抄読】

担当:大槻

タイトル:Anterior cingulate inputs to nucleus accumbens control the social transfer of pain and analgesia

出典:Smith et al., Science 371, eabe3040 (2021) 8 January 2021

  • 背景・目的:“痛みの共感”には前部帯状皮質の神経活動が関与すると報告されている.しかし,もし本当に前部帯状皮質が“痛みの共感”に重要な領域であれば,光遺伝学的手法を用いて神経活動の興奮・抑制を操作すると“痛みの共感”に変化は生じるのか.また,前部帯状皮質の神経活動はどの脳領域に投射されて,その経路は“痛みの共感”に関与するのかは不明なため検討した.
  • 方法:多様なトランスジェネティックマウスとウイルスベクターを組み合わせた対象マウスと炎症誘発マウス,鎮痛誘発マウスに社会的接触課題を実施した.“痛み(痛みの増加・痛みの低下)の共感”がマウスに生じているのか確認するため,von frey filamentを用いた機械逃避閾値テスト,その他様々な行動評価手法を用いて行動の変化を検討した.
  • 結果:非炎症誘発マウス(対象マウス)と炎症誘発マウスを一緒のゲージに1時間滞在(社会的接触)させると,対象マウスの痛み感受性が増加した.痛み感受性が増加した対象マウスの前部帯状皮質の神経活動を興奮・抑制させると作用に応じて痛み感受性が変化した.また.社会的接触をしているとき,前部帯状皮質から側坐核コアの神経回路が“痛み(痛みの増加)の共感”に関与することが分かった.さらに,対象マウスと鎮痛誘発マウスを社会的接触させた場合においても, “痛み(痛みの低下)の共感”には前部帯状皮質から側坐核コアの神経回路が関与することが分かった.
  • “痛み(痛みの増加・痛みの低下)の共感”には前部帯状皮質から側坐核コア経路の神経活動が関与することが明らかとなった.