3/1 勉強会
【研究報告】
担当:小島
タイトル:条件刺激位置の違いがPaired pulse depressionに及ぼす影響
- 目的:末梢刺激時の皮質反応は,短い間隔で2連発刺激を行うと1発目の反応に比べ,2発目の反応が減弱することが報告されており,これは,Paired pulse depression(PPD)という.本研究では,2連発刺激の刺激位置の違いがPPDの減弱度合いに及ぼす影響を明らかにすることと,PPDの減弱度合いと2点識別覚閾値との関連を明らかにすることを目的とした.
- 方法:対象は健常成人20名であった.PPDの計測には,全頭型脳磁界計測装置を用いて,右示指に対する触覚刺激後の皮質活動を計測した.計測条件は,1発刺激(single)と刺激位置が異なる2連発刺激(PPD_normal,PPD_near,PPD_middle,PPD_far)の合計5条件とし,各200回をランダムに計測した.また,2点識別覚閾値は,右示指の指腹で計測を行い,50%の確立で正答できる2点間隔を算出した.
- 結果:誘発波形の大きさは,single時に比べて全ての2連発刺激時で有意に小さく,PPDが認められた.しかしながら,抑制度合いの比較では,2連発刺激条件間で有意な差が認められなかった.一方,PPD_far条件の抑制度合いと2点識別覚閾値との間に有意な負の相関が認められた.
- 結論:2連発刺激の刺激位置の違いは,PPDの抑制作用に影響を及ぼさない可能性が示唆された.
【文献抄読】
担当:玉越
タイトル:Treadmill exercise enhances synaptic plasticity in the ischemic penumbra of MCAO mice by inducing the expression of Camk2a via CYFIP1 upregulation
出典:Shen, Weimin, et al. Life Sciences 270 (2021): 119033.
- 目的:運動は虚血性脳卒中患者の回復に有効であるが、樹状突起のリモデリングやシナプス可塑性を促進するメカニズムは未だ不明である。本研究では,トレッドミル運動が虚血性脳卒中患者のシナプス可塑性と樹状突起リモデリングを促進するメカニズムについて検討した。
- 方法:C57BL/6マウスを用いて中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを作成し、レンチウイルス媒介細胞質FMRP関連タンパク質1(CYFIP1)shRNAの発現を利用して、運動誘発性のシナプス可塑性と樹状突起リモデリングの増加におけるCYFIP1の役割を確認した。運動機能障害はZea Longaスケールを用いて測定した。脳虚血性障害を評価するためにH&E染色およびNissl染色を行った。樹状突起リモデリングとシナプス可塑性の変化を観察するためにGolgi-cox染色を使用した。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてシナプス構造を観察した。また、免疫蛍光染色とウエスタンブロッティングを用いて分子機構の解明を行った。
- 結果:トレッドミルトレーニングはシナプス可塑性を向上させた。さらに、CYFIP1とカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ2a(Camk2a)の発現が有意に増加し、機能回復を促進させ、梗塞容積が減少した。しかし、CYFIP1 shRNAを含むレンチウイルスを側脳室に注入すると、シナプス可塑性に負の効果を示した。さらに、レンチウイルスを介したCYFIP1 shRNAの発現により、運動による神経保護効果は減弱し、Camk2aの発現低下とともに運動機能が低下した。
- 意義:トレッドミルトレーニングは、CYFIP1のアップレギュレーションを介してCamk2aの発現を誘導することにより、虚血性脳卒中におけるシナプス可塑性と樹状突起リモデリングを促進する。