月経周期によって、運動学習能力が変わる!?

佐藤大輔教授(健康スポーツ学科,スポーツ生理学Lab,運動機能医科学研究所)、五十嵐小雪さん(修士課程健康スポーツ学分野2年)らの研究論文が国際誌に掲載されました.

 

月経周期によって、運動学習能力が変わる!?

 

研究成果のポイント:
1. 月経周期によって運動パフォーマンスが変化する原因について、体力面や心理面から調べられてきましたが、技能面への影響は不明でした.
2. 運動技能に着目して研究を行ったところ、黄体期に運動学習能力が低下することが分かり、パフォーマンスを低下させる要因の一つである可能性を示すことができました.
3. 女性は「運動技能を学習(練習)するタイミング」が重要であり、月経周期が女性の能力を最大限に引き出すための鍵となるかもしれません.

 

研究者からのコメント:

私たちの研究グループでは、「月経を女性の味方にする」ことをテーマに、研究を進めてきました.今回の実験では、運動を繰り返し行うことで習得する技能のレベル(運動学習能力)が、月経周期の一つである黄体期に低下したことから、女性が運動技能を習得するには、「学習(練習)するタイミング」が重要であることが分かりました.

 

図1.視覚追従課題
専用器具(写真右上)を親指と人差し指でつまむと、赤い線が画面上に表示されます.赤い線は、力を入れると上に移動し、力を弱めると下に移動します.つまむ力を調節して、画面左から移動していく黒いターゲット線に赤い線を合わせていきます.合計で100回行い、黒い線と赤い線のズレを評価しました.

 

図2.脳波の計測法

 

 

図3.本研究の結果

a, b)黄体期に学習した人(青線)は、排卵期に学習した人(赤線)と比べて、運動学習能力が低いことが分かりました.1週間後に同様の課題を行っても、黄体期に学習した人は、運動学習能力が低いことが分かりました.

c)黄体期に学習した人は、安静状態での一次運動野の活動が、過剰に活動していました.

d)PMSと運動学習能力の関係性をみると、PMSの症状が大きい人ほど、運動学習能力が低下しました.

 

 

図4.本研究結果の概要

 

掲載論文

【題目】 Menstrual Cycle Modulates Motor Learning and Memory Consolidation in Humans. (月経周期は運動学習と記憶強化を変調する)

【著者名】 Koyuki Ikarashi, Daisuke Sato, Kaho Iguchi, Yasuhiro Baba, Koya Yamashiro.

【掲載雑誌】 Brain Sciences 2020;10(10):E696. doi: 10.3390/brainsci10100696..

URL: https://www.mdpi.com/2076-3425/10/10/696