10/26 勉強会
【研究報告】
担当:徳永
タイトル:筋骨格モデル解析によるランバート・パラドックス現象の再考
- 目的:筋骨格モデルを用いたシミュレーションによって股・膝関節におけるハムストリングス(HAM)と大腿直筋(RF)の機能を明らかにし,その結果を基にHAMとRFの同時収縮によって股・膝関節に伸展運動が生じるランバード・パラドックス現象が生じる姿勢条件を同定すること.
- 方法: 本研究はOpenSim 3.3を用いた筋骨格モデル・シミュレーションを行った.先行研究においてHAM・RFの機能は姿勢に応じて変化することが知られている.そのため,本研究では股関節屈曲角度-30 ~ 90 °,膝関節屈曲角度-10 ~ 90 °の中で関節角度を変動させて姿勢条件を設定し,上記の関節角度の範囲における全ての組み合わせにおけるHAM・RFの機能を検証した.姿勢条件を決定した後にInduced Acceleration解析を実行し,股・膝関節におけるHAM・RFの機能を同定した.
- 結果:姿勢に応じてHAMには2つのモード(モード1:股関節伸展・膝関節屈曲,モード2:股関節伸展・膝関節伸展),RFには3つのモード(モード1:股関節屈曲・膝関節伸展,モード2:股関節屈曲・膝関節屈曲,モード3:股関節伸展・膝関節伸展)が出現することが明らかとなった.また,股・膝関節におけるHAM・RFの機能は姿勢に応じて動的に変化しているため,ランバート・パラドックス現象は限局した条件下でしか生じないことが明らかとなった.
- 結論:HAMとRFの同時収縮が生じている場合であってもランバート・パラドックス現象が常に働いているわけではなく,動作時に生じるRFとBFLHの同時収縮の機能を解釈する際にはこの点を念頭におくことが必要であることが考えられた.
【文献抄読】
担当:五十嵐眸実
タイトル:Induced oscillatory signaling in the beta frequency of top-down pain modulation
出典:Martin Diers et al.,Pain Rep 2020 Jan 17
- 背景:特にβ周波数範囲で誘発された同期脳活動は、侵害受容刺激の知覚の注意変調の人間の電気生理学的研究では十分に調査されていない.
- 方法:脳磁図(MEG)を使用して、健康な被験者(n = 17)の侵害受容刺激に対する時間分解脳応答を測定した.以前の研究として誘発された反応を調査することに加え,侵害受容刺激によって誘発されたβ活性が2つの注意条件の間で異なるかを検討した.被験者は,2つの異なる実験条件,「痛みへの注意」と「色への注意」において,2つの刺激モダリティ(痛みを生み出す表皮内電気刺激と視覚刺激)を同時に提示した.MEGデータはBrainstormにて解析を行った.
- 結果: 痛みの評価は,「色への注意」条件と比較して「痛みへの注意」条件で有意に高かった.誘発反応のピーク振幅は,insulaとS2の両側の「痛みへの注意」条件,および刺激の対側S1で有意に大きかった.痛みを伴う刺激に対する誘発反応は,「痛みへの注意」条件のβ周波数範囲の対側S1で有意に強かった.
- 結論:誘発反応の注意変調に関する以前の報告を支持し,侵害受容刺激のトップダウン変調におけるβ周波数で誘発された振動活動の機能的役割を示唆している.