9/14 勉強会

【研究報告】

担当:宮口

タイトル:補足運動野への交流電流刺激が両手運動課題に与える効果

  • 目的:補足運動野(SMA)への経頭蓋交流電流刺激(tACS)が両手運動課題の成績に及ぼす影響を明らかにすること.
  • 方法:対象は健常成人32名であった.tACS(1.0 mA,25 cm2)の電極貼付部位は,SMAと左肩とした.刺激条件は,①20 Hzの周波数で刺激する条件(β-tACS条件),②80 Hzの周波数で刺激する条件(γ-tACS条件),③疑似刺激条件(sham条件)の3条件とした.両手運動課題の評価には9トライアルのPurdue Pegboard Test(PPT)を用い,1分間に組み立てたパーツ数を評価した.tACSはPPTの各トライアル遂行中に施行した(各1分間).各被験者が遂行した9回のPPTのパーツ数の近似直線を算出した.また近似直線と実際に遂行したパーツ数との差を算出し,刺激による成績変化量の指標とした.さらに近似直線の切片の値をベースライン成績の指標とした.
  • 結果:β-tACS条件では成績変化量とベースライン成績との間に有意な正の相関が認められ(p = 0.007,Pearson’s r = 0.464),γ-tACS条件では有意な負の相関が認められた(p = 0.012,Pearson’s r = -0.438).またサブグループ解析の結果,低成績群では,γ-tACS条件における成績変化量の平均値は,β-tACS条件よりも有意に大きい値となり(p = 0.048),高成績群では,γ-tACS条件よりもβ-tACS条件(p = 0.002)およびsham条件(p = 0.014)において有意に大きい値となりました.
  • 結論: SMAに対するtACSの効果は,刺激頻度と被験者のパフォーマンスレベルに依存しており,ベースラインの運動成績が高い被験者にはβ帯域の刺激が有効であり,反対にベースラインの運動成績が低い被験者にはγ帯域の刺激が有効であることが示唆された.またこの結果には,SMAに対するtACSによって,運動計画の維持および更新が変調されたことが関係している可能性が考えられた.

 

【文献抄読】

担当:大鶴

タイトル:An interoceptive illusion of effort induced by false heart-rate feedback.

出典:Iodice et al., PNAS, 2019; 116, 13897-13902

  • 目的:心拍数フィードバックを変化させることによって、主観的な努力感の錯覚が起こるかを検討すること。
  • 方法:エルゴメーターによる運動負荷時に、実際の心拍数より遅いもしくは早いペースで聴覚によるフィードバックを実施し、主観的努力感の変調を調べた。
  • 結果:実際の心拍数より早いペースでフィードバックを行った際に、主観的努力感は増大した。
  • 結論:主観的努力感において、心拍数(内受容)に関する偽のフィードバックを行うことで、錯覚が起こることを示した。