8/31 勉強会

【研究報告】

担当:高林

タイトル:扁平足と正常足におけるランニング中の足部内キネマティクスの違い

  • 目的:代表的な足部変形である扁平足は,様々な筋骨格系障害の原因になることが明らかになっている.ランニング中,足部は後足部だけでなく中足部や前足部の動きも重要であるが,扁平足ににおける足部内の動きは明らかになっていない.本研究は扁平足と正常足でランニング中の後・中・前足部の動きの違いを検証した.
  • 方法:対象は健常成人男性の正常足14名と扁平足14名とした.検者間の再現性が認められているFoot posture indexを用いて,スコアが0~+5を正常足,6以上を扁平足として分類した.ランニング中の後足部,中足部,前足部の動きを解析し,SPMで二群間で比較した.
  • 結果:扁平足は立脚期の広範囲で後足部と中足部が有意に回内,前足部は有意に回外していた.他のセグメントの動きは有意差は認められなかった.
  • 結論:本研究結果は,扁平足がMTSS(シンスプリント)を発症しやすい理由を説明できる可能性がある.今後は筋形態や筋活動などの要因も含め前向きに検討していく.

 

【文献抄読】

担当:菊元

タイトル:Does the Spraino low-friction shoe patch prevent lateral ankle sprain injury in indoor sports? A pilot randomised controlled trial with 510 participants with previous ankle injuries

出典:Lysdal et al., British Journal of Sports Medicine 2020 Aug 12

  • 背景と目的:足関節内反捻挫は,非接触型での発生率がインドアのスポーツで高値を示している.その発生メカニズムは,靴とフロアの摩擦による床反力の過度な内側方向への傾きが要因であるとしている.この床反力の傾きを発生させる靴とフロアの摩擦を,デンマーク製の”Spraino”という足関節内反捻挫予防の外郭シールにより軽減させ,非接触型の足関節内反捻挫の減少に寄与するか否か,疫学的検証を行っている.
  • 方法:3競技91チーム1339選手を対象に,包含基準を満たした510選手よりベースラインを決定した.Sprainoを使用している群と使用していない群を20週前後フォローし,足関節内反捻挫の発症率を調査した.
  • 結果:両群合わせて,151例の足関節内反捻挫が発生し,96例が非接触型であった.重症例は50例で,Sprainoを使用した群では,内反捻挫の発生率は0.87,非接触型は0.64,重症例は0.47であった.復帰まで要する時間は,Spraino群が平均1.8週,使用していない群が2.8週であった.また,Sprainoを装着したことが受傷機転となった症例が6例あった.
  • 結論:Sprainoは,屋内スポーツにおける非接触型の足関節内反捻挫の発生リスクを軽減する可能性が示唆された.Sprainoを使用しない群に比べ,重症な足関節内反捻挫の発生が53%低値となり,更にSprainoは,足関節内反捻挫に関連する痛みや恐怖心を和らげる効果が期待できる.
  • 自身の研究との関連:スポーツ外傷の中でも発生率が高い足関節内反捻挫は軽視される傾向にあるが,膝前十字靭帯損傷などの重篤なスポーツ外傷の発生リスク因子であると考えられ,その予防の重要性が言われている.本品の様に,簡便な方法で発生率を下げられるのであれば,スポーツ現場でも有用であると考えられる.ただし,その効果が運動学や運動力学的な検証が不十分であるため,更なる検討が必要不可欠である.