8/17 勉強会

【研究報告】

担当:堀田

タイトル:高酸素血症モデルラットにおける骨格筋酸素動態

  • 背景:生物は極度の低酸素環境から誕生してきた.現在の大気中の酸素濃度は約21%であり,それを超えるような高酸素環境に暴露された際の生体の応答は不明な点が多い.高酸素血症が骨格筋間質の高酸素を引き起こすか否かは不明である.
  • 目的:高濃度酸素の吸入が骨格筋間質の酸素分圧(pO2is)に与える影響を検証した.
  • 方法:雄性Sprague-Dawleyラットの前脛骨筋を対象筋とした.麻酔下で100%酸素と空気を混合したガスを吸入することで吸入気酸素濃度(FiO2)を0.21, 0.60, 0.80および1.00へと10分毎に増加した.その後,血管拡張薬(ニトロプルシドナトリウム,プラゾシン,フェントラミン)を動脈内投与した.血液ガス分析装置を用いて動脈血酸素分圧(PaO2)を,リン光クエンチング法により前脛骨筋のpO2isをそれぞれ計測した.
  • 結果:FiO2を0.21から1.00に増加させることでPaO2は有意に増加したが,pO2isの変化は認められなかった(PaO2 119±32 vs. 520±24 mmHg, P<0.01; pO2is 9.3±1.6, 9.0±1.9 mmHg; FiO2 0.21 vs. 1.00).血管拡張薬投与によりpO2isの増加が認められた(9.0±1.9 vs. 62.3±12.5 mmHg, P<0.01, 投与前 vs. 後).
  • 考察:血管平滑筋の収縮が高酸素血症モデルラットにおける骨格筋の酸素化を防いでいると考えられた.
  • 結論:高濃度酸素の投与はラット骨格筋間質の酸素分圧に影響しなかった.

 

【文献抄読】

担当:佐藤成

タイトル:The time course of cross‑education during short‑term isometric strength training

出典:Carr JC et al. The time course of cross-education during short-term isometric strength training. European Journal of Applied Physiology. 2019;119(6):1395-407.

  • 目的:4週間の片側の等尺性トレーニングが反対側肢における力の立ち上がり率に及ぼす影響とその経時的変化を検討した.
  • 方法:若年の非鍛錬者20名の肘屈筋を対象に,片側のトレーニング群とコントロール群に分け,4週間,計11セッションのトレーニングを行い,1週毎に反対側の最大等尺性筋力と力の立ち上がり率を評価した.
  • 結果:反対側において最大等尺性筋力はベースラインと比較して2週間で有意に増加し,収縮開始初期における力の立ち上がり率は3週間で有意に増加した.
  • 結論:短期間の片側の等尺性トレーニングによって,反対側肢の最大筋力は2週間で増加し,瞬発的な筋力発揮は3週間で増加することが明らかとなった.