6/29 勉強会
【研究報告】
担当:小島翔
タイトル:条件刺激位置の違いpaired pulse depressionに及ぼす影響
- 目的:末梢に対する体性感覚刺激は,大脳皮質の神経活動を惹起する.短時間の2連発刺激を行うと,1発目の神経活動と比較し2発目の神経活動が減弱される.この現象はPaired pulse depression(PPD)といい,皮質内の抑制作用を示すと報告されている.これまでは,同一部位に対する刺激によってPPDが記録されているが,刺激部位が異なる場合のPPDの振る舞いは明らかとなっていない.そこで,本研究の目的は,条件刺激位置の違いがPPDに及ぼす影響を明らかにすることとした.
- 方法:健常成人12名を対象とした.皮質活動は,306チャネル脳磁界計測装置を用い,触覚刺激を用いた体性感覚刺激後の皮質活動を記録した.触覚刺激には,機械的触圧覚刺激装置および点字様刺激ピンを用いた.刺激部位は右示指の指腹とし,刺激条件は,1)1回刺激,2)同一部位2回刺激(PPD),3)2回刺激(ピン間隔2.4 mm:PPD_near),4)2回刺激(ピン間隔7.2 mm:PPD_middle),5)2回刺激(ピン間隔12.0 mm:PPD_far)の5条件とし,ランダムに各200回以上の刺激を行った.記録された波形から,1発目の振幅に対する2発目の波形の割合を算出し,各条件間で比較検討を行った.
- 結果:すべてのPPD条件で有意な抑制作用が認められ,PPDが確認できた.各条件間での抑制量の比較では,PPD_far条件において他の条件よりも抑制作用が有意に大きいことが明らかとなった.
- 結論:PPDは,条件刺激の位置の違いによって抑制作用が異なることが示唆された.
【文献抄読】
担当:太田
タイトル:TACAN is an ion channel involved in sensing mechanical pain
出典:Beaulieu-Laroche et al. Cell 2020; 180: 1–12.
- 目的:新規イオンチャネルTACANが機械痛覚に関わる機械感受性イオンチャネルであることを証明する。
- 方法:TACANが後根神経節のどの細胞タイプに発現するか調べた。TACANそれ自体が機械感受性を持ち、イオンチャネルとして機能するか電気生理学的に解析した。遺伝学的にTACAN遺伝子を欠損・減少させ、機械痛覚行動を調べた。
- 結果:TACANは非ペプチド性侵害受容器に発現していた。培養細胞にTACANを強制発現させると機械感受性が上昇した。TACANは非選択的陽イオンチャネルの特徴を持っていた。TACAN遺伝子の抑制により機械痛覚行動が減弱した。さらに、TACANは機械感受性イオンチャネルとしてすでに知られているPiezoチャネルとは独立して、機械痛覚を担うことが示唆された。
- 結論:TACANは機械痛覚に関わる機械イオンチャネルであり、痛みの根本的な治療ターゲットとして期待される。