6/15 勉強会
【研究報告】
担当:五十嵐
タイトル:視覚,聴覚,体性感覚モダリティによる行動抑制機能の違い
- 背景:日常生活やスポーツ活動において重要である、既に開始されている動作を止める能力(行動抑制機能)の測定には、Stop signal task(SST)が用いられており、 Stop signal reaction time(SSRT)で評価される。だが、Signalのモダリティが行動抑制機能を変化させる要因の一つであると指摘されているにもかかわらず、視覚・聴覚・体性感覚モダリティで比較した研究はなく、行動抑制機能に対する影響は不明である。
- 目的:GoとStop signalを同じモダリティにしたパラダイムを用いて、視覚・聴覚・体性感覚モダリティで行動抑制機能とそれに関わる神経活動を比較すること。
- 仮説:Go/No-go taskにおいて、視覚モダリティで正答率が低い。SSTでは、誤答するとGoとStop間が短くなるため、SSRTが視覚よりも聴覚・体性感覚モダリティで短くなる。行動抑制機能に関連する神経活動については、各モダリティにおける処理速度を考慮するとStop-N2潜時が聴覚・体性感覚モダリティで短くなる。
- 方法:被験者は30名(女子被験者はホルモンの影響を排除するために卵胞期に実施)、視覚/聴覚/体性感覚SST (1 block 104回×3モダリティ×3セット)脳波計測は32チャンネル,サンプリング周波数2000Hzで計測、脳波解析はStop signalの100ms前~800ms後の間を分析、Stop-N2/P3成分の潜時と振幅を比較する予定である。
【文献抄読】
担当:玉越
タイトル:Neurogenesis promoted by the CD200/CD200R signaling pathway following treadmill exercise enhances post-stroke functional recovery in rats
出典:Brain, Behavior, and Immunity, 2019, Sun et al.
- 目的:本研究は、脳梗塞後のトレッドミル走行による運動機能・認知機能回復促進及び神経増殖に対するCD200/CD200Rの関与を検証した。
- 方法:右中大脳動脈閉塞再灌流モデルラットを用いた。運動介入は、トレッドミル走行装置を用いて、発症4日目から28日目まで実施した。機能評価にはBeam Walking test, Corner testを用いた。認知機能評価には、novel object test, morris water maze testを用いた。神経増殖もしくは細胞分裂を検証するために、蛍光免疫組織化学染色を用いて、脳室下体、吻側移動経路、損傷周囲部、海馬、大脳皮質のKi67, Nestin, DCX, BrdU, NeuNを標識した。CD200およびCD200Rはウェスタンブロッティング法を用いてタンパク発現量を解析した。Lentivirus-pLKD-CMV-Puro-U6-shRNA (CD200R1)を用いて、CD200Rをノックダウンさせた状態で、運動の効果を検証した。また、CD200Rの作動薬であるCD200Fcを用いて、CD200Rを活性化させた状態で運動介入を行い、併用効果を検証した。
- 結果:脳梗塞後の運動介入によって、脳室下体および海馬における細胞分裂もしくは神経増殖の促進が認められた。また、梗塞周囲部および大脳皮質においても新生神経の増加促進が認められた。運動介入によって、ミクログリアにおけるCD200Rが発現増加した。CD200Rをノックダウンすると、運動介入による機能回復および神経増殖は制限された。CD200Fcとトレッドミル走行の併用は、トレッドミル走行単独より機能回復および神経増殖の促進効果が高かった。
- 考察:本研究から、脳梗塞後の運動介入による機能回復及び神経増殖の促進には、CD200/CD200Rが関与していることが示唆された。