4/6 勉強会

【研究報告】

担当:渡邉

タイトル:反復的触覚刺激の入力パターンの違いが一次体性感覚野の活動性に与える影響

  • 目的:反復的触覚刺激入力の触覚刺激入力パターンの違いが,一次体性感覚野(S1)の抑制性に与える影響を明らかにする.
  • 方法:健常成人を対象に,20分間の示指への触覚刺激介入前後の体性感覚誘発電位(SEP)を記録した.触覚刺激にはピエゾ型触覚刺激装置を用い,点字様のピンを突出させることで触覚刺激を提示した.触覚刺激介入条件は,単純触覚刺激条件,複雑触覚刺激条件の二条件とした.単純触覚刺激条件では,合計24本の点字ピンをすべて同時に突出させ,被験者の右示指を反復的に刺激した.一方,複雑触覚刺激条件では,縦に6ピン並んだ触覚刺激の列が左右に移動しながら被験者の右示指を反復的に刺激した.両介入条件は,刺激頻度,刺激強度,刺激面積,刺激時間は統一して実施した. 体性感覚誘発電位は,正中神経刺激により誘発し,単発の電気刺激により誘発したSEP(Single)と,二連発の電気刺激により誘発したSEP(Paired)を記録した.PairedからSingleを減算することで,二発目の電気刺激に対するSEP(A2)を算出し,A2をPairedの1発目のSEPで除すことにより,Paired-pulse depression (PPD) ratioを算出した.本研究では,Single-SEPをS1の興奮性の指標,PPD ratioをS1の抑制性の活動の指標として評価した.
  • 結果:両条件介入前後で,S1の興奮性・抑制性の活動は変化しなかった.現在11名まで計測済みであり,15名まで被験者追加予定.

 

【文献抄読】

担当:下門

タイトル:Cortical Correlates of Locomotor Muscle Synergy Activation in Humans: An Electroencephalographic Decoding Study

出典:Yokoyama et al., iScience 15(31) May 2019, 623-639.

  • 目的:神経解読技術を用いて筋シナジーの活性化を皮質活動から解読し、筋シナジーの解読精度が個々の筋からの解読精度よりも高いことを明らかにする。
  • 方法:12名の健常男性が参加し、トレッドミル歩行を行った。歩行制御に関する脳波と単一筋および筋シナジー活動を計測し、機械学習による脳活動情報解読を用いて、脳波から解読した筋シナジーと実測した筋シナジーを比較した。
  • 結果:筋活動から非負値行列分解(NMF)を用いて、平均で4.17±0.58の筋シナジーが抽出された。脳波から解読した筋シナジーと比較したところ、決定係数は0.25-0.28であった。一方、個別の筋活動では0.11-0.28と筋シナジーよりも低い値となった。
  • 結論:脳波情報から筋シナジー活動と単一筋活動の両方を適度に予測できた。平均予測精度は筋シナジーの方が高かった。脳はヒトの脚の筋を個別制御ではなく、筋シナジーという協働筋活動のレベルで筋制御していることを示唆した。これらの結果は、筋シナジー活性化の神経解読の実現可能性を示し、運動制限のある患者の歩行を回復するための効果的なBMI開発へ貢献する。