膝蓋大腿関節にかかるストレスは膝関節屈曲30度で最も小さくなることを解明!
-数学モデルによるシミュレーション研究-
研究内容の概要:
現在,年齢男女問わずランニングの人気が高まっています,その一方でランニング障害の発生率も増加しています.ランニング障害のなかでも,膝前面痛が主症状である膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)は,ランニング障害全体の25%を占めています.この膝蓋大腿関節症は,ランニング競技のアスリートだけではなく,一般的に趣味としてランニングを楽しむランナーにも頻発します.
膝蓋大腿関節症の危険因子として,膝蓋大腿関節(PFJ)にかかるストレス(PFJS)の増加が関与することがわかっています.これまでPFJSを減少させるにはランニング時に前足部で接地すること,あるいはステップ長を短くする戦略があると報告されていました.これらの戦略は,膝関節角度と膝関節モーメントを変化させ,結果的に関節角度とモーメントがPFJSを変化させます.しかし,膝関節角度とモーメントがどのような組み合わせでPFJSを最も減少させているかが明らかになっていません.そこで,本研究では8676通りのシミュレーションにより膝関節角度とモーメントの変化がPFJSに与える影響について検証し,最もPFJSが増加,あるいは減少できる角度とモーメントの組合せを検証しました.その結果, PFJSは膝屈曲角度が約10°で最も増加し,30度で最も減少することを明らかにしました.
研究者からのコメント:
本研究結果より,PFJSは膝屈曲角度が約10°で最も増加し,30度で最も減少することがわかりました.PFJSの増加は膝蓋大腿関節症の発生要因であり,かつ膝関節の痛みにも関連しています.本研究は膝蓋大腿関節症による膝の痛みに苦しむランナーにとって,有益な基礎情報になり得ると考えています.
本研究成果のポイント:
①膝蓋大腿関節モデルを用いてPFJSを計算した点.
②数学モデルを用いて,シミュレーションによりPFJSが最も減少する角度とモーメントの組合せを明らかにした点.
③どのモーメントの値をとっても膝関節屈曲30度でPFJS最も減少することを明らかにした点.
原著論文情報:
Takabayashi T, Edama M, Inai T, Tokunaga Y, Kubo M. A mathematical modelling study investigating the influence of knee joint flexion angle and extension moment on patellofemoral joint reaction force and stress. Knee. 2019.