12/9 勉強会

【研究報告】

担当:玉越

タイトル:脳出血モデルラットにおける超早期リハビリテーションは炎症促進因子の発現を促進し,運動機能回復を遅延させる

  • 目的:近年,大規模な臨床研究で,脳卒中発症後24時間以内の超急性期リハビリテーションは機能予後を悪化させることが報告された.さらに,脳梗塞モデル動物を用いた基礎研究においても,発症後24時間以内の運動介入は炎症促進因子を増加促進し,神経細胞死を促進することが報告されている.先行研究では脳梗塞や大脳皮質損傷を対象とした検証をしており,脳出血後の超早期リハビリテーションの効果は検証されていない.そこで,本研究は,脳出血後の超早期リハビリテーションが運動機能回復および脳組織に及ぼす影響について検証することを目的とした.
  • 方法:実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた.対象を無作為に偽手術群(SHAM群),脳出血+非運動群(ICH+Cont群),脳出血+超早期トレッドミル群(ICH+VET群)の3群に分けた.脳出血モデルは,左方3.0mm, 前方0.5mm, 深度4.0mmの位置にカニューレを挿入し,コラゲナーゼ・Type IV(200 U/ml,1.6ul)を一定流速で注入して作製した.ICH+VET群は,手術6時間後から6日まで,1日1回,60分間トレッドミル装置で走行させた.手術6時間後は,9 m/minで行い,その後は,11m/minで実施した.運動機能評価にはHorizontal ladder testを用いて,梯子から前肢が落下した割合(エラー率)を解析した.手術6日目に全群の脳組織を採取した.また,発症初期における運動の急性効果を検証するために,手術6時間後と24時間後に運動を実施した後,脳組織を採取した.脳組織解析では,血腫体積,脳浮腫を測定した.また,リアルタイムPCR法を用いて,大脳皮質感覚運動野におけるIL-1b,TGF-b1,IGF-1のmRNA発現量を解析した.統計処理にはTukey法による多重比較検定を用いて群間比較を行った.
  • 結果:Horizontal ladder testにおいて,ICH+VET群のエラー率が,ICH+Cont群と比較して有意に増加した.血腫体積および脳浮腫は,ICH+Cont群とICH+VET群の間に有意差はなかった.ICH+VET群のIL-1bのmRNA発現量は,SHAM群と比較して有意に増加した.ICH+Cont群のTGF-b1とIGF-1のmRNA発現量は,SHAM群と比較して有意に増加した.ICH+VET群のTGF-b1のmRNA発現量は,ICH+Cont群と比較して有意に低下した.
  • 考察:本研究から,脳出血後24時間以内から開始する運動は,運動機能障害を悪化させることが明らかとなった.脳組織の解析から,運動機能障害の増悪は,血腫体積や脳浮腫の増大助長ではなく,感覚運動野において,抗炎症関連因子と神経成長因子の増大が抑制し,炎症促進因子が増加促進したことが関与していると考えられる.

 

【文献抄読】

担当:山代

タイトル:The influence of eye closure on somatosensory discrimination: A trade-off between simple perception and discrimination

出典:Götz et al. Cereb Cortex. 2017;27(6):3231-3239

  • 目的:目を閉じた時に2つのモダリティをまたぐOne-back課題の成績が向上するかについて検討する。
  • 方法:被験者は21名とし, 触覚および聴覚刺激をそれぞれ1-1.4秒間隔で提示した。触覚刺激は示指・中指・薬指に圧刺激を提示した。聴覚刺激は900Hz・1000Hz・1100Hzの純音を提示した。2つのモダリティの刺激が同期しないように呈示される中、どちらかのモダリティのOne-back課題を実施した。One-back課題では連続して同じ刺激が来た場合にボタン押しをした。
  • 結果:One-back課題を実施している最中の触覚P50mおよび聴覚P50mが減弱した。目の開閉は脳活動の大きさに影響しなかった。One-back課題の成績は目をあけた時にわずかに高かった。
  • 考察:モダリティをまたいで一つの課題を実行したときにP50mはどちらのモダリティでも減弱した。これには側方抑制などが関与していると考えられた。目を開けた場合にパフォーマンスが良かったのは、空間情報を必要とするような識別では視覚情報を使うことが有利に働くと示唆された。