10/17 勉強会
研究報告
担当:大山
テーマ:両手二点識別の体性感覚誘発脳磁界
- 目的;本研究では,一側と両側同時に触圧覚二点刺激を与えた時の体性感覚誘発脳磁界(SEF)を計測解析し,
二点識別の処理過程について検討することを目的とした.
- 方法;対象は,健常男性6名とした.SEF波形の計測には,306チャネル脳磁界計測装置を用いた.二点刺激
は非磁性体触圧覚刺激装置(ピン径1.3mm,突出量0.7mm)を利用し,全ての被験者が明らかに二点と判別
できるピン間隔7.2mmの二点刺激を与えた時と,ピン間隔が2.4,4.8,7.2mmの3種類の二点刺激をランダム
に与え二点識別させた時の2条件を設定した.二点の刺激持続時間は10msとし,ランダムに刺激した.2条件とも,
二点刺激は右示指と両側示指に対して行い,SEFはそれぞれ300回加算平均した.
- 結果;一側,両側刺激とも2条件において60,150,300ms後に明確な波形(第一,第二,第三成分)の
ピークが左半球に認められ,これらのピーク潜時には有意な差はなかった.2条件間で比較すると,一側刺激では
有意差はなかったが,両側同時刺激では二点識別時に第二,第三成分の振幅が有意に増大した(P<0.05).第二,
第三成分の電流発生源は,それぞれ一次感覚野(3b野)と3b野の後方に同定された.
- 考察;両側刺激は,一側刺激に比べ多シナプス的に興奮性が増大することで,より鮮明に二点識別過程が解析可能
となり,頭頂葉の5野近辺での活動が観察できたと考えられた.
文献抄読
担当: 岩波
論文: The relationship between corticospinal excitability during motor imagery and motor imagery ability
Jacqueline Williams et al., Behavioural Brain Research:印刷中、2011
要旨:
- 目的; 行動観察や運動イメージをしている間に, それらの行動に特異的な筋で運動誘発電位(MEP)振幅の増大が
起こることが一般的に知られている. 本研究は, MEP振幅と被検者の運動イメージ能力に関連があるか否かに
ついて検討することを目的とした.
- 方法; 被検者は健常成人15名(男性5人)で全て右利き, 平均年齢は29.7歳であった. 運動イメージ能力は,
Vividnessof Movement Imagery Questionnaire-2 (VMIQ-2)とhand rotation taskで評価した. TMSは安静時,
連続した母指対立運動の観察またはイメージ中に対側半球に行い, MEPは短母指外転筋から導出した.
- 結果; MEP振幅は安静時と比較して運動観察条件・運動イメージ条件で有意に増加した. イメージ条件でのMEP
振幅の変化量とイメージ能力との間には有意な相関関係を認め, 特に鮮明なイメージ能力と課題の反応時間との
間に強い関連が認められた. 観察条件でのMEP振幅の変化とイメージ能力との間には, 有意な相関が認められなかった.
- 考察; これらの結果より, 健常者による運動イメージ中の皮質脊髄路活性化レベルは, 個々のイメージ能力の違いに
- 影響されること示唆された. また, 対象者の運動イメージ能力はイメージトレーニング効果の決定因子である可能性があり,
今後は臨床場面で運動イメージが治療的に適用される際に, 対象者のイメージ能力を評価することが重要であると推察された.