7/22 勉強会

【研究報告】

担当:下門

タイトル:水中キック泳中のスイマー足部周りの流れの可視化

  • 背景・目的:スイマーの推進力を計測するのは困難であったが、流体力学研究手法をヒトに応用することで、カメラで撮影した流れの情報から推進力を推定できる可能性がある。水中ドルフィンキックを対象として、スイマー後流の流れを三次元的に可視化する。
  • 方法:1名の大学競泳選手を対象に、回流水槽にて実験を行った。三次元動作分析と同時に足部に働く圧力値、流れの三次元計測を行った。流れを三次元化するために、解析時に動作の位相分けと流れ場の座標変換を行った。
  • 結果:けり下ろし中にスイマーは加速していたことからこの局面に着目したところ、ひねりの動きを加えて足部周りに大きな圧力差を生んでいた。流れを見ると、この時に足部裏側に大きな渦の塊を作り出していたことが分かり、けり下ろし後にはジェット流が放出されていた。これらの現象から、下肢の捻りと渦の形成が推進力獲得のカギであることが分かった。
  • 結論:足部の方向変換が圧力勾配を作り足部に働く力を最大化させ推力を得ており、それがジェット流として後流へ反映された。

掲載論文
Shimojo, H., Gonjo, T., Sakakibara, J., Sengoku, Y., Sanders, R., Takagi. H. A quasi three-dimensional visualization of unsteady wake flow in human undulatory swimming. Journal of Biomechanics. 2019 (in press) DOI: 10.1016/j.jbiomech.2019.06.013

 

【文献抄読】

担当:濱上

タイトル:Decreased alertness due to sleep loss increases pain sensitivity in mice

出典:Alexandre C et al. Nat Med. 2017;23(6):768-774.

  • 目的:睡眠不足により痛みが増強されるメカニズムを明らかにする。
  • 方法:マウスを用いて短期的な睡眠不足モデルと慢性的な睡眠不足モデルを作製する。それぞれのモデル対して痛みの行動学的検査と、カフェイン、モダフィニル、イブプロフェン、モルヒネを投与する薬理実験をおこなう。
  • 結果:短期的および慢性的な睡眠不足は痛みが惹起されるが、1日の正常な睡眠によりその痛みは改善した。またイブプロフェンやモルヒネといった鎮痛薬は睡眠不足による痛みを軽減しなかったが、カフェインやモダフィニルといった覚醒を促す物質は痛みを抑制した。
  • 結論:睡眠不足は痛みを増強し、この痛みは鎮痛剤ではなく覚醒レベルの向上または睡眠の改善により軽減する。