6/3 勉強会

【研究報告】

担当:山代

タイトル:前頭へのtRNSが体性感覚・聴覚のGo/Nogo識別時間に及ぼす影響

  • 背景:先行研究において非侵襲的脳刺激法が脳活動を変調し,リハビリ効果や様々なパフォーマンスを高めることが広く知られるようになってきた.一方で,その刺激効果にはバラつきが多く,現在も最適な刺激パラメーターや脳活動との関連性について模索されている.
  • 目的:本研究では,M1に対して刺激効果が高いとされている経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)法を用いて体性感覚及び聴覚領域のGo/Nogo識別時間を高めることができるか否かについて検討した.
  • 方法:右利き健常成人男性12名を対象とした.Go/Nogo識別課題の学習効果を避けるために,トレーニング日を設定し,それから約1週間以内の間隔で偽刺激条件とtRNS条件でGo/Nogo識別時間を評価した.tRNSは5×5cmの電極を用いて,右の背外側前頭野を刺激部位をとした.刺激時間は15分,刺激強度は1.5mAであった.
  • 結果:偽刺激条件とtRNS条件を比較したところ,どちらの条件においても刺激前と刺激後に有意な変化を認めなかった.
  • 結論:本研究ではGo/Nogo識別時間を高めることができなかった.個人間のバラつきが大きいため,今後は脳活動とパフォーマンスの関連性について検討する必要がある.

 

【文献抄読】

担当:山﨑

タイトル:Intensity Matters: High-intensity interval Exercise Enhances Motor Cortex Plasticity More Than Moderate Exercise

出典:Andrews et al. Cerebral Cortex. 2019;00: 1-12 doi: 10.1093/cercor/bhz075

  • 目的:一次運動野(M1)の可塑性を高めるには、中等度運動と高強度インターバル運動(HIIT)のどちらが有効か明らかにすること.また、運動効果がBDNF遺伝子多型に影響を受けるか明らかにすること.
  • 方法:20名の健常成人を対象にHIIT、中等度運動、安静条件を別日に実施した.それぞれの介入後に、iTBSを用いてM1可塑的変化を誘導した.介入前後、iTBS後に経頭蓋磁気刺激を用いて皮質脊髄路興奮性と皮質内興奮性を評価した.BDNFのVal/Val遺伝子多型を持つ被験者とVal/Metの遺伝子多型を持つ被験者でiTBSによる皮質内興奮性変化を比較した.
  • 結果:中等度運動と比べて、HIITはその後のiTBSの効果を増強させた.安静時ではiTBSの期待した効果が得られた被験者の割合が15%だったが、HIIT後にはその割合が65%まで上昇した.HIIT条件において、Val/Metの遺伝子多型を持つ被験者ではiTBSによる皮質内興奮性増大が生じなかった.
  • 結論:中等度運動よりもHIITがM1可塑性の強化に効果的である.また、HIITがiTBSに与える効果はBDNF遺伝子多型に影響を受ける.