4/15 勉強会
【研究報告】
担当:菊元
タイトル:ACL再建術後の競技復帰時における復帰基準の再考
- 目的:膝前十字靱帯(ACL)再建術後の競技復帰時における復帰基準として,求心性収縮による等速性膝関節伸展筋力の最大値が用いられることが多い.しかしながら,未だに再損傷率が高値を示しており,復帰基準の再考が必要である.そこで本研究は,ACL損傷の好発動作である片脚着地時と同様である,遠心性収縮時の膝関節伸展筋力の最大値と筋の立ち上がり量に着目し,ACL再建術群と健常群の比較を目的とした.
- 方法:下肢関節に整形外科的疾患を有していない高校生女子バスケットボール選手20名と,片脚のみACL再建術を施行した後に競技復帰をしている高校生10名を対象に,多用途筋機能評価訓練装置(Biodex System4)を用いて等速性(60deg/sec)による筋力測定を実施した.求心性収縮時と遠心性収縮時の最大筋力値と,筋力発生時から50msecまでの筋の立ち上がり量を群間で比較をした.
- 結果:遠心性収縮時の最大筋力値(P<0.04)と,求心性収縮による50msecまでの筋の立ち上がり量(P<0.03)に,健常群に比してACL群が有意に低値を示した.求心性収縮時の最大筋力値には,有意な差は認められなかった(P<0.79).
- 結論:一般的に競技復帰時に使用されている求心性収縮時の最大筋力値に,健常群とACL群で有意な差は認められず,新たな復帰基準が必要であることが示唆された.そして好発動作である片脚着地時の収縮様式である,遠心性収縮時の最大筋力値と求心性収縮による50msecまでの筋の立ち上がり量に有意な差が認められ,新たな復帰基準として有用である可能性が示唆された.
- 今後:対象者を増やし継続的,かつ前向きな調査を実施したい.
【文献抄読】
担当:髙橋
タイトル:Transient receptor potential ankyrin 1 (trpa1) mediates il-1β-induced apoptosis in rat chondrocytes via calcium overload and mitochondrial dysfunction
出典:Yin et al. J Inflamm (Lond). 2018;15:27.
- 目的:ラットの軟骨細胞を用い,IL-1βを介した軟骨細胞アポトーシスにTRPA1が関与するかを検証.
- 方法:ラット膝関節から軟骨細胞を単離・培養.IL-1βを添加した軟骨細胞におけるTRPA1発現をRT-PCR,WBによって定量化し,TRPA1のCa2+の流入についてもFITCで定量化した.次に,IL-1βを添加した軟骨細胞アポトーシスにTRPA1,ミトコンドリア機能が関与しているかについて,TRPA1選択的阻害剤を用い,TUNELアッセイ,フローサイトメトリーによって測定した.
- 結果: IL-1βによってTRPA1のmRNAおよびタンパク発現が容量依存的に増加した.Ca2+流入についても,IL-1β容量依存的に増加し,阻害剤により低下した.また,IL-1β添加時に起こるアポトーシスおよび関連マーカーも阻害剤により下方制御した.IL-1βによるミトコンドリア膜電位低下についても,阻害剤により有意に改善した.
- 結論:TRPA1は,OA治療の標的となり得ることが示唆された.