3/18 勉強会

【研究報告】

担当:徳永

タイトル:股・膝関節運動におけるハムストリングス機能の解明―数理モデルによる検証―

  • 目的:股・膝関節運動におけるハムストリングス(HAM)機能が姿勢の影響によってどのように変化するのかを順動力学シミュレーションによって明らかにすること.
  • 方法:身長1.8m,体重80kgの対象者を仮定し,体幹・大腿・下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築した.順動力学シミュレーションは,膝関節を屈曲0-90度,股関節を伸展30-屈曲90度の範囲内から初期姿勢を規定した後に,HAMに張力を生じさせることによって実施した.HAM機能は,順動力学シミュレーション開始時と終了時の股・膝関節屈曲角度の差を用いて評価した.
  • 結果: HAMは姿勢の変化に応じて1) 股関節伸展および膝関節屈曲,2) 股関節伸展および膝関節伸展,3) 股関節屈曲および膝関節屈曲,といった3つの機能を発現させることが明らかとなった.
  • 考察: 本研究では,股・膝関節運動におけるHAM機能は,姿勢に応じて3つの異なる状態へ変容する可能性を示した.これは,姿勢が変化することで1) HAMの股・膝関節におけるモーメントアームが変化したこと,2) セグメント間の力学的相互作用(Dynamic coupling)が変化したこと,の2つの要因によってHAM機能が修飾されたためと考えられる.

 

【文献抄読】

担当:小島(翔)

タイトル:Unilateral wrist extension training after stroke improves strength and neural plasticity in both arms

出典:Sun et al. Exp Brain Res. 2018;236(7):2009-2021.

  • 目的:一側の運動練習によって,練習側だけでなく非練習側の運動機能が変化すること(cross-education)が報告されている.本研究の目的は,脳卒中慢性期患者を対象に,一側上肢の運動練習によるcross-educationを検討することとした.また,cross-educationによる神経生理学的指標もあわせて検討を行った.
  • 方法:対象は,慢性期脳卒中患者24名であった.非麻痺側での一側手関節最大伸展運動(5回×5セット,週3回)を5週間実施し,伸展筋力,脊髄興奮性機能(reciprocal inhibition,cutaneous reflex),皮質興奮性機能(cortical silent period,short-interval intracortical inhibition,intracortical facilitation,transcallosal inhibition),運動機能(Fugl-Meyer scores,Wolf Motor Function Tests)を介入前,介入後,介入後5週間で計測を実施した.
  • 結果:伸展筋力は,介入前に比べ介入後で練習側,非練習側ともに有意に増大した.脊髄興奮性機能は,cutaneous reflexが介入前後で有意な変化を示し,また皮質興奮性は,cortical silent periodおよびtranscallosal inhibitionが有意に変化を示した.
  • 結論:慢性期脳卒中患者において,cross-educationの効果が認められた.また,このcross-educationの効果は,脊髄および皮質の抑制作用を示す指標(cortical silent period,transcallosal inhibition)の変化に依存している可能性が示唆された.