3/11 勉強会

【研究報告】

担当:玉越

タイトル:脳出血ラットにおける早期運動は感覚運動野における炎症を抑制し,神経保護作用を促進する.

  • 目的:脳出血モデルラットを用いて早期運動介入が感覚運動野に与える影響について検証した。
  • 方法:実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた。対象を無作為に偽手術群(SHAM群)、脳出血+非運動群(ICH+Cont群)、脳出血+早期トレッドミル群(ICH+ET群)、脳出血+後期トレッドミル群(ICH+LT群)の4群に分けた。脳出血モデルは、左線条体にコラゲナーゼ・Type IVを一定流速で注入して作製した。トレッドミル走行条件は、11m/minの速度で60分間とし、ICH+ET群は術後2日目から8日目まで、ICH+LT群は術後9日目から15日目まで実施した。運動機能評価価を術前、術後1日目、8日目、15日目に行った。脳出血後16日目に脳組織を採取し、ニッスル染色を用いて損傷体積、大脳皮質の厚さ、神経細胞数を解析した。また、Golgi-Cox染色を用いて、樹状突起の長さおよび複雑性を解析した。さらに、リアルタイムPCR法を用いてIL-1b、 IGF-b1、 IGF-1のmRNA発現量を解析した。
  • 結果:ICH+ET群はICH+Cont群とICH+LT群より有意な機能改善を示した。損傷体積は、ICH+Cont群、ICH+ET群、ICH+LT群の間に有意差はなかった。ICH+ET群の大脳皮質の厚さおよび神経細胞数は、ICH+Cont群およびICH+LT群と比較して有意に高値を示した。 樹状突起の長さと複雑性において、ICH+ET群はICH+Cont群およびICH+LT群と比較して有意に増加した。 ICH+ET群のIL-1b mRNA発現量がICH+Cont群と比較して有意に低値を示した。
  • 考察:脳出血後早期の運動介入は後期介入より機能改善効果が高いことが分かった。早期介入には損傷体積の拡大を軽減させる効果はなかったが、感覚運動野における皮質の萎縮抑制効果を認めた。神経細胞の組織学的解析から、早期介入には、感覚運動野の神経細胞死や樹状突起の退縮を抑制する効果があることが分かった。さらに、遺伝子解析の結果から、炎症促進因子の抑制が関与していることが分かった。