2/4 勉強会

【研究報告】

担当:正木

タイトル:地域在住高齢者に対する段差昇段動作中での上・下段側下肢に対するトレーニングが移動能力、荷重量、下肢筋力およびバランス能力に及ぼす効果 ―無作為化比較対照試験―

  • 目的:本研究の目的は、地域在住高齢者に対する段差昇段動作中での上・下段側下肢に対するトレーニングが段差昇段時間、歩行速度、Timed up & go test (TUG)、5回立ち座り時間といった移動能力、段差昇段動作中での荷重量、下肢筋力およびバランス能力に及ぼす効果を検討することとした。
  • 方法:地域在住高齢者38名を上段側下肢トレーニング群 (PLT群) 19名と下段側下肢トレーニング群 (PST群) 19名に群分けした。両群とも60分間の運動教室に週2回、12週間参加した。PLT群には段差を上段側下肢で強く踏み込むように意識して昇段する上側段差昇段トレーニング、PST群には下段側下肢で強く蹴るように意識して昇段するpushing up側段差昇段トレーニングを実施した。PLT群には膝関節伸展筋トレーニング、PST群には足関節底屈筋トレーニングを実施した。また、両群ともに同様の股関節伸展・外転筋トレーニング、バランストレーニングを実施した。介入前後に、移動能力、段差昇段動作中での荷重量、下肢筋力およびバランス能力の評価を実施した。統計解析では、分割プロットデザイン二元配置分散分析、対応のあるt検定を行った。
  • 結果:二元配置分散分析の結果、有意な交互作用は段差昇段動作中での上段荷重量、股関節伸展筋力にみられた。対応のあるt検定の結果、介入前と比較して介入後にPST群のみ段差昇段動作中での上段荷重量が有意に減少し、股関節伸展筋力が有意に増加した。また、両群ともに通常・最大段差昇段時間、TUG、5回立ち座り時間、段差昇段動作中での下段荷重量が介入後に有意に向上した。
  • 結論:地域在住高齢者においてPLTとPSTによる効果の差は、段差昇段動作中での上段荷重量 、股関節伸展筋力にみられ、PLTよりもPSTの方が段差昇段動作中での上段荷重量を減少させ、股関節伸展筋力を増加させた。また、PLT、PSTともに段差昇段時間、TUG、5回立ち座り時間といった移動能力、段差昇段動作中での下段荷重量を向上させることが示唆された。

 

【文献抄読】

担当:金子

タイトル:Range limitation in hip internal rotation and fifth metatarsal stress fractures (Jones fracture) in professional football players

出典:Saita et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018;26(7):1943-1949.

  • 目的:第5中足骨骨折(ジョーンズ骨折)に関連する未知の危険因子を特定する.
  • 方法:ジョーンズ骨折の既往群(N = 20)と既往なし群(N = 40)の男子プロサッカー選手の症例対照研究を実施した.既往歴および身体検査データをレビューし,2つの群を比較した.身体検査データとジョーンズ骨折の有無との関連を記述するために,単変量ロジスティック回帰および,年齢・利き足・BMIを回帰式に含む多変量ロジスティック回帰を使用してオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を得た.
  • 結果:ジョーンズ骨折の既往群は(25.9°±7.5°,平均±標準偏差(SD))既往なし群(40.4°±11.1°,P <0.0001)と比較して,股関節内旋(HIR)が制限されていた.ロジスティック回帰分析は,HIR制限がジョーンズ骨折のリスクを増加させることを証明した(OR = 3.03,95%CI 1.45-6.33,P = 0.003).ジョーンズ骨折に先立つデータを用いたサブグループ分析は,HIR制限を有する選手がジョーンズ骨折を発症する危険性が高いような因果関係を示した[Crude OR(95%CI)= 6.66(1.90-23.29),P = 0.003,調整されたOR = 9.91(2.28-43.10),P = 0.002].さらに,右のHIR制限は,同側および対側の足におけるジョーンズ骨折の発生リスクを増加させた[それぞれ3.11(1.35~7.16)および2.24(1.22~4.12)].同様に,左のHIR範囲の制限は,同側または対側の足[OR(95%CI)= 4.88(1.56-15.28)および2.77(1.08-7.08)]のリスクを増加させた.
  • 結論:HIR制限は,ジョーンズ骨折を発症するリスクの増加と関連していた.HIRは修正可能な要因であるため,HIR可動域を改善することにより,ジョーンズ骨折の発生を低減することができる可能性がある.