10/29 日本臨床神経生理学会予演会

日本臨床神経生理学会予演会

担当:宮口

タイトル:経頭蓋交流電流刺激中の運動遂行機能の変化‐位相特異性の検証‐

  • 目的:一次運動野(M1)および小脳半球に対する経頭蓋交流電流刺激(tACS)の効果には,位相特異性があるか否かを明らかにする.
  • 方法:対象は健常成人20名であった.tACS(1.0 mA,70 Hz)の電極貼付部位は,左M1,右小脳半球,右肩とした.刺激条件は,①M1と小脳半球上の電極に流れる電流の位相が同位相の条件,②逆位相の条件(逆位相条件),③疑似刺激条件の3条件とした.刺激時間は各条件30秒間とし,各条件介入中に右示指による視覚追従課題を行い,課題誤差を比較した.
  • 結果:疑似刺激条件に比べ,逆位相条件の課題誤差が有意に小さい値となった(p=0.021).また疑似刺激条件において課題誤差が大きい人ほど,逆位相条件において課題誤差が小さい値となった(p=0.002,r=-0.649).
  • 結論: M1および小脳半球に対するtACSの効果には,位相特異性があることが明らかになった.

 

担当:平林

タイトル:同時収縮中の収縮強度変化が脊髄相反性抑制に及ぼす影響

  • 目的:本研究の目的は,同時収縮中の収縮強度変化が,脊髄相反性抑制に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は健常成人男性20名とした.条件刺激と試験刺激の間隔(C-T間隔)を-2 ms,0 ms,1 ms,2 ms,3 ms,4 ms,5 msに設定し,条件刺激をしない試験刺激のみ(single)を加えた8条件をランダムにそれぞれ10回与えた.同時収縮課題は,前脛骨筋とヒラメ筋の収縮強度が同程度で,rest,5%MVC,15%MVC,30%MVCの4課題とした.
  • 結果:同時収縮課題の5%MVCと15%MVCは,Restと同様に,C-T間隔が2 ms以降でsingleと比較してH反射振幅値が有意に減少し(p<0.01),30%MVCではC-T間隔3ms以降で有意に減少した(p<0.01).
  • 結論:本研究の結果より,5%MVCと15%MVCの同時収縮中はIa相反抑制が機能していることが明らかとなった.

 

担当:小島

タイトル:機械的触覚刺激介入が体性感覚誘発磁界に及ぼす影響

  • 目的:本研究の目的は,一定時間の機械的触覚刺激介入が体性感覚誘発磁界(SEF)に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は健常成人10名(21.7 ± 2.0 歳)であった.機械的触覚刺激は点字様の刺激ピン24本を用い,刺激部位は右示指の指腹とした.介入条件は単純刺激(刺激面全体を同時に刺激する条件)と複雑刺激(刺激面内を左右に刺激が移動する条件)の2条件とし,介入時間は20分間(on/off:1秒/5秒)とした.SEFの計測は,各介入前後において刺激ピン6本(刺激時間:1 ms)を用い記録し,刺激後50 ms付近で認められる振幅値(P50m)を算出した.
  • 結果:単純刺激介入では,介入前に比べ介入後においてP50m振幅値が有意に増大した(P = 0.028).一方,複雑刺激介入では,介入前に比べ介入後においてP50m振幅値が有意に減少した(P = 0.032).
  • 結論:機械的触覚刺激介入は,一次体性感覚野の興奮性を変動させることが明らかとなった.