10/1 勉強会
【研究報告】
担当:徳永
タイトル:体幹前傾姿勢におけるバランス制御様式の解明
- 目的:体幹前傾姿勢における開眼両脚立位保持のバランス制御様式を明らかにすること.
- 方法:対象は健常成人男性4名であった.計測にはCCDカメラ11台を含む3次元動作解析装置を使用した.課題動作は30秒間の開眼両脚立位保持とし,足を肩幅に広げた自然な状態(Upright条件)と体幹前傾および膝関節屈曲位(Stoop条件)の2条件で各3回ずつ計測した.計測されたマーカー位置データより足・膝・股関節の角加速度を算出した.各関節がどの程度連動して変位しているのかを検証するために足・膝・股関節角加速度を用いて主成分分析を行った.
- 結果:Upright条件に比較してStoop条件では,第1主成分の寄与率は有意に低値を示しており,第2主成分の寄与率は有意に高値を示していた.両条件ともに第1主成分では股関節角加速度の関与が高く,第2主成分では足・膝関節角加速度の関与が高かった.また,第2主成分における足関節角加速度の関与はUpright条件に比較してStoop条件で有意に高値を示した.
- 考察:ヒトの立位バランスの保持は足・膝・股関節の協調運動によって達成されており,どのような協調運動を行うかは課題の難易度や外乱刺激の強度などによって変化すると報告されている.本研究の結果より,Stoop条件ではUpright条件に比較して足・膝・股関節を協調的に変位させることによって,立位バランスを保持をしていることが明らかとなった.
【文献抄読】
担当:小島(翔)
タイトル:The ipsilateral corticospinal responses to cross-education are dependent upon the motor-training intervention
出典:Leung M, Rantalainen T, Teo WP, Kidgell D. Exp Brain Res. 2018 May;236(5):1331-1346.
- 目的:本研究の目的は,一側の運動トレーニングが対側の運動機能および皮質脊髄路興奮性に与える影響を明らかにすることとした.
- 方法:対象は健常成人43名とし,4つのトレーニング群に分けた.4つの群は,①ダンベルを用いた筋力トレーニングをメトロノームに合わせて行うスローペース筋力トレーニング群(SPST),②自己ペースの筋力トレーニング群(NPST),③力の調節を必要とする視覚追従課題トレーニング群(VT),④日常生活を送るコントロール群(control)とした.各トレーニングは,3週間実施した.身体機能評価項目は,最大随意収縮強度および視覚追従課題成績とし,神経生理学的評価項目は,経頭蓋磁気刺激後の運動誘発電位(MEP)と皮質内抑制(SICI)とし,評価項目は全て非トレーニング側から記録した.各評価項目は,トレーニング開始前,トレーニング開始1週間後,トレーニング終了後に記録を行った.
- 結果:3週間のトレーニングの結果,最大随意収縮強度は,SPST群およびNPST群において介入前より有意に高い値を示した.視覚追従課題成績は,VT群においてのみ介入前より有意に高い値を示した.MEP振幅値は,SPST群およびVT群において介入前より有意に高い値を示し,またSICIは,同群において抑制作用の減弱が認められた.
- 結論:一側トレーニングの効果は非トレーニング側に影響を及ぼすこと(Cross-education)が確認され,Cross-educationによる皮質脊髄路興奮性変動はトレーニング方法に依存することが示唆された.