立ち上がり動作の時間は矢状面上の股関節モーメントインパルスに影響を与えるか?
稲井卓真(大学院博士課程2年・運動機能医科学研究所所属)らの研究論文が『BioMedical Engineering OnLine』に採択されました。
研究の概要と稲井さんからのコメントは以下の通りです。
概要
変形性股関節症は、股関節の軟骨に変性や摩耗が生じる代表的な整形外科疾患です。近年、前額面と矢状面上の股関節累積負荷(=股関節モーメントインパルスと1日あたりの平均歩数の積)の増大が変形性股関節症の進行を助長すると報告されています。すなわち、股関節モーメントインパルスが低減された動作を解明することは、変形性股関節症の進行を予防するための基礎的知見になる可能性があります。本研究では、「立ち上がり動作の時間(すなわち速度)」と「矢状面上の股関節モーメントインパルス(すなわち股関節屈曲・伸展モーメントインパルス)」に着目し、これらの関係を実験データ(参加者:20名)およびコンピューターシミュレーションを用いて検討しました。その結果、立ち上がりの時間が短い(速度が速い)ほど、矢状面上の股関節モーメントインパルスが小さくなることが明らかになりました(図1)。本研究は、『BioMedical Engineering OnLine』に掲載予定です。
図1. 立ち上がり動作の時間(時間が短いほど、立ち上がり速度が速い)と股関節モーメントインパルスの関係
筆頭著者からのコメント
今回の研究結果は、変形性股関節症の進行を遅延させるための基礎的な知見になりうると考えています。今後は、歩行動作における股関節モーメントインパルスを低減させる方法等について検討していきたいと考えています。
原著論文情報
Inai T, Takabayashi T, Edama M, Kubo M. Relationship between movement time and hip moment impulse in the sagittal plane during sit-to-stand movement: A combined experimental and computer simulation study. BioMedical Engineering Online. 2018. In press