11/20 日本臨床神経生理学会予演会①
【日本臨床神経生理学会予演会①】
担当:齊藤
タイトル:指尖への末梢電気刺激後に生じる触覚方位弁別能力向上にPaired pulse inhibitionの減弱が関与する
- 目的:指尖への高強度および低強度の末梢電気刺激(PES)が触覚方位弁別覚(GOT)とPaired pulse inhibition(PPI)に及ぼす影響を検証した.
- 方法:対象は健常成人10名とした.右示指に対して30分間の高強度および低強度のPESを与え,その前後でGOTとPPIを計測・比較した.
- 結果:高強度および低強度PES後にGOT閾値とPPIに変化を認めなかった.しかし,高強度PES後に生じるGOTの閾値変化とPPI変化の間には負の相関が認められ,PES後にPPIが減弱するほどGOT閾値が低下した.
- 結論:指尖へのPES後に生じる触覚方位弁別能力の向上にはPPIの減弱が関与する可能性が示唆された.
担当:立木
タイトル:反復他動運動のduty cycleの有無が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響
- 目的:反復的他動運動の運動と休息を設けるduty cycleの有無が皮質脊髄路の興奮性に与える影響を明らかにすることを目的とした.
- 方法:皮質脊髄路の興奮性評価には,経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を用い,脊髄の興奮性評価には電気刺激によって誘発されるF波を用いた.介入を右示指の内外転他動運動10分間とし,角速度40°/秒で行う連続的な反復他動運動と,角速度40°/秒もしくは100°/秒で行う4秒on-6秒offのduty cycleを設けた間欠的な反復他動運動の3条件とした.
- 結果:連続的な反復他動運動と間欠的な反復他動運動(100°/秒)介入後にMEP振幅値の有意な低下を示した.一方,間欠的な反復他動運動(40°/秒)介入後にはMEP振幅値に有意な変化を認めなかった.F波振幅値はいずれの条件においても有意な変化を示さなかった.
- 結論:本研究結果より,duty cycleの有無に関わらず,一定回数の反復他動運動を10分間行うことでM1の興奮性が低下する可能性が示唆された.
担当:宮口
タイトル:経頭蓋交流電流刺激介入中の運動遂行機能の変化
- 目的:経頭蓋交流電流刺激(tACS)を用いて一次運動野(M1)直上および対側小脳半球直上をガンマ帯域の周波数で刺激することにより,刺激中の運動遂行能力が向上するか否かを明らかにする.
- 方法:対象は健常成人20名であった.tACSの刺激強度は1.0 mAとし,刺激周波数は70 Hz(ガンマ帯域)および20 Hz(ベータ帯域)とした.刺激時間は30秒間とし,刺激条件は,①疑似刺激条件,②左一次運動野と右頬部を刺激する条件,③右小脳半球と右頬部を刺激する条件,④左一次運動野と右小脳半球を刺激する条件(M1-小脳条件)の4条件を設定した.各条件介入中に右示指外転運動による視覚追従課題を行い,tACS中の視覚追従課題の運動成績を比較した.
- 結果:ガンマ帯域のtACSを実施した結果,疑似刺激条件における運動成績とM1-小脳条件の運動成績に負の相関関係が認められ(p<0.05,r=-0.455),運動成績が低い被験者ほどM1-小脳刺激により運動機能が改善した.またベータ帯域のtACSでは運動成績の変化は認められなかった.
- 結論:運動成績が低い被験者に対して,ガンマ帯域のtACSをM1領域および小脳半球領域に与えることにより,刺激中の運動遂行能力が向上する可能性が示唆された.
担当:小島
タイトル:機械的触覚刺激が手指運動機能と皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響
- 目的:一定時間の機械的触覚刺激が手指運動機能および皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を明らかにすることとした.
- 方法:対象は健常成人8名であった.機械的触覚刺激は点字様の刺激ピンを24本用い,刺激部位は右示指の指腹とした.介入条件は単純刺激(刺激面全体を同時に刺激する条件)と複雑刺激(刺激面内を左右に刺激が移動する条件)の2条件とし,介入時間は20分間(on / off:1秒/5秒)とした.運動機能の計測にはgrooved pegboard testを用い, 30秒間で通すことができたピンの本数を記録した.また,皮質脊髄路興奮性の計測は,経頭蓋磁気刺激を用いてrecruitment curveを記録した.
- 結果:複雑刺激介入では,介入前に比べ介入後において運動機能の向上および皮質脊髄路興奮性の増大が認められた.
- 結論:機械的触覚刺激介入は,皮質脊髄路の興奮性および運動機能を変動させることが示唆された.
担当:山﨑
タイトル:一過性の低強度有酸素性運動による一次運動野上肢及び下肢領域の抑制機能の変化
- 目的:一過性の低強度有酸素性運動による一次運動野(M1)上肢・下肢領域の抑制機能の変化を明らかにすること
- 方法:健常成人15名を対象にM1上肢領域の計測を行う実験1とM1下肢領域の計測を行う実験2を実施した.いずれの実験も運動試技と安静試技の2条件とし、運動試技では最高酸素摂取量の30%強度で30分間のペダリング運動を行った.介入前後に経頭蓋磁気刺激を用いてM1抑制機能(SICI、LICI、SAI)を測定した.
- 結果:30分のペダリング運動により、M1上肢領域では運動20分後に・下肢領域では40分後にSICIの減弱が認められた.また上肢領域・下肢領域ともに運動20分後にSAIの減弱が認められた.
- 結論:一過性の低強度ペダリング運動はM1上肢・下肢領域のSICI、SAIを減弱させることが明らかになった.