9/11 勉強会

【研究報告】

担当:大西

タイトル:体性感覚刺激によるPaired pulse depression (PPD) とEvent related desynchronization (ERD)との関係およびPPDの再現性

  • 目的:正中神経刺激によるSEF波形には,N20m, P35m, P60mの3つも著明な波が認められる.刺激間隔を10~500msの刺激間隔でペア刺激を行うと二発目の刺激によって誘発されるP35mやP60mが減弱する反応(Paired pulse depression, PPD)が認められ,一次体性感覚野(S1)の抑制機能評価として用いられることがある.しかし,PPDは被験者間のバラツキが大きく,そのバラツキの原因が不明である,また,PPDの再現性も不明である.そこで,正中神経刺激後の周波数パワー変化がPPDのバラツキに影響を及ぼしているのではないかと仮説を立て,検証することを目的とした.最終的にはS1内の抑制機能の評価指標を確立することである.
  • 方法:対象は健常成人19名であった.306chの脳磁計を利用し,次の6種類の刺激パターンで右正中神経を刺激した際のSEFを記録した(条件a:試験刺激のみ,条件b:1発の条件刺激,条件c:10Hzで6発の条件刺激,条件d:20Hzで6発の条件刺激,条件e:50Hzで6発の条件刺激,条件f:100Hzで6発の条件刺激).条件刺激と試験刺激の間隔は500ms,試験刺激間隔は4.5秒から5.5秒に設定し,各条件をランダムに提示した.まず,PPDとして単発刺激に得られた波形に対する割合を算出し,次に,試験刺激後に認められるα,β,γ帯域の周波数パワー変動を算出した.これらの結果から,PPDの割合と各周波数パワー変動との関係性を解析した.加えて,12名の被験者に対して同様の実験を行い,正中神経刺激によるPPDの再現性も併せて解析した.
  • 結果: N20mはいずれの条件においてもPPDは認められず,P35mはいずれの条件においてもPPDが認められた.P60mは10Hzで6発条件でのみPPDが認められた.また,β帯域のdesynchronization (ERD)の大きさとP60mのPPDとの間に有意な相関関係が認められ,βERDが強い被験者程P60mのPPDが大きい(減弱が大きい)ことが明らかになった.一方,P35mのPPDと周波数パワー変化との関係性は認められなかった.加えて,P35m-PPDの再現性は高く,P60m-PPDの再現性は中等度であった.
  • 結論:正中神経ペア刺激によるP60mのPPDは,正中神経刺激後のβERDの大きさと関連していることが判明した.