4/24 日本理学療法学術大会予演会②

【日本理学療法学術大会予演会②】

担当:大鶴

タイトル:外部空間位置が両手の触覚情報統合に及ぼす影響

  • 目的:外部空間における両手の位置が、脳内における触覚情報統合過程にどのような影響を及ぼすかを検討する。
  • 方法:健常成人10名を対象とし、外部空間における位置が異なる2条件(両手が近接している条件、離れている条件)において、触覚刺激に対する脳活動を、MEGを用いて検討した。
  • 結果:運動感覚野におけるβ帯域の事象関連同期が、両手が近接する条件において増大することが示された。
  • 結論:両手の外部空間位置が、触覚情報統合過程に影響を及ぼす可能性が示唆された。

 

担当:正木

タイトル:地域在住高齢者に対する段差昇段トレーニングの違いが段差昇段時間および運動機能に及ぼす効果 ―無作為化比較対照試験―

  • 目的:地域在住高齢者に対する段差昇段トレーニングの違いが段差昇段時間といった動作能力に及ぼす効果を,段差昇段動作中の荷重量,下肢機能,バランス能力への効果と合わせて検討した.
  • 方法:対象は地域在住高齢者38名とし,上段側トレーニング群 (UT群) 19名と下段側トレーニング群 (LT群) 19名に群分けした.両群とも60分間の運動教室に週2回,3ヵ月間継続して参加した.UT群には30cm段差を上段側下肢で強く踏みこむように意識して昇段する上段側段差昇段トレーニング,下肢筋力トレーニング,バランストレーニングを実施した.LT群には30cm段差を下段側下肢で強く蹴るように意識して昇段する下段側段差昇段トレーニング,下肢筋力トレーニング,バランストレーニングを実施した.介入前後に,通常・最大段差昇段時間,通常・最大歩行速度,TUG,5回立ち座り時間を測定した.また,段差昇段動作中での上段・下段最大荷重量,股関節伸展・外転筋力,膝関節伸展筋力,垂直跳び,立位ステッピング回数,開眼片脚立位時間を測定した.
  • 結果:有意な交互作用は段差昇段動作中の上段荷重量,股関節伸展筋力のみにみられ,事後検定の結果,LT群のみ上段荷重量が有意に減少し,股関節伸展筋力が有意に増加した.また,事後検定の結果,UT群,LT群ともに,通常・最大段差昇段時間,TUG,5回立ち座り時間,下段荷重量,立位ステッピング回数が有意に向上した.さらに,介入後にUT群では垂直跳びが有意に向上した.
  • 結論:段差昇段トレーニングの違いによる効果の差は,段差昇段動作中の上段荷重量,股関節伸展筋力のみにしかみられなかったが,地域在住高齢者に対するトレーニングは,段差昇段時間といった移動能力,段差昇段動作中の下段荷重量および下肢機能を向上させることが示唆された.

 

担当:菊元

タイトル:バスケットボール競技における非接触型膝前十字靭帯損傷予防に必要な矢状面上の下肢関節戦略

  • 目的:非接触型膝前十字靭帯(ACL)損傷の発生メカニズムとして,着地動作時に生じる力が,下肢へ加えられた際に起こる不適正な動作が考えられている.そこで我々は,非接触型ACL損傷が発生した際に生じる,唯一の外力である床反力を,発生メカニズムのメインリスクファクターとして着目し,床反力の効率的な吸収方法に必要な矢状面上の下肢関節モーメントを考察する着想に至った.先行研究からも,生体内のACLに歪み計を取り付け,その脚で前方へジャンプ着地を行った際の床反力最大値と,ACLの歪み度合が一致している(Cerulli 2003)ことからも,床反力が関節内の負荷に大きな要因となっていることが明確である.本研究の目的は,床反力が小さくなる効率的な着地動作を行うには,どのような下肢関節モーメントが必要なのか検証することである.
  • 方法:下肢関節に手術歴がない女性バスケットボール選手30名(19.5歳±3.3歳)を対象に,バスケットゴール中心真下から10m離れた場所をスタート位置とし,ドリブルで4m進んだ直後に左右で片脚ステップをする,いわゆるユーロステップを行い両脚着地,その直後にジャンプシュートを行った.初ステップの方向を左右各3回ずつ行い,両側着地時の初接地脚の床反力と矢状面上の下肢関節モーメント(股関節屈曲伸展,膝関節屈曲伸展,足関節底背屈)を測定した.床反力ピーク値と各関節モーメントとの相関にはPearsonの相関係数を用いて検討し,有意水準は5%とした.
  • 結果:着地動作時の床反力の大きさと,膝関節屈曲伸展モーメント,股関節屈曲伸展モーメント共に有意な相関関係は認められなかった.しかしながら,両脚着地時の初接地脚の足関節底屈モーメントと床反力最大値との間に,有意な負の相関が認められた(r =-0.863, P < 0.01).
  • 結論:足関節底屈モーメントが床反力に影響を及ぼしている結果から,足関節の矢状面上の動きを効率的に利用して床反力を吸収することが,着地動作時の外傷予防には必要であることが示唆された.また足関節底屈モーメントがマイナスの値を示している試技は床反力が高値を示しており,この原因として着地時の重心位置が後方に移動していることが予想される.これは床反力の大きさをリスクファクターと考える本研究の見解と,先行研究で述べられている非接触型ACL損傷好発肢位(Boden 2000)となる見解が一致している.以上から,今回試行したバスケットボール競技に特化した着地動作では,足関節の底屈モーメントを効率的に働かせ着地を行うことで床反力を小さく抑えることができ,接触型ACL損傷の予防に繫がる可能性がある.

 

担当:中村(雅)

タイトル:骨格筋電気刺激が内頚動脈血流量に及ぼす影響の検討

  • 目的:下肢を中心とした骨格筋電気刺激(Electrical Muscle Stimulation:EMS)が脳の栄養血管の一つである内頚動脈の血流量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人男性7名を対象に,安静背臥位で両側下肢に20分間のEMSを実施した時の左内頚動脈の血流量(ml/min)と心拍数(拍/min)をパルスドプラ法により測定した.また血流量を心拍数で除することで心拍1拍あたりの内頚動脈の血流量(ml/拍)を算出した.
  • 結果:内頚動脈の血流量と心拍数は開始前と比較して開始後5,10,15分後の血流量は有意に高値を示したが,終了直後とは有意な差は認められなかった.一方,1拍あたりの内頚動脈の血流量には全ての時期において開始前と有意な変化は認められなかった.
  • 結論:下肢を中心としたEMSにより内頚動脈の血流量が増加し,その効果はEMSが終了すると消失することが明らかになった.

 

担当:高橋

タイトル:変形性膝関節症モデルラットにおける軟骨細胞配列パターンの変化

  • 目的:OAモデルラットを用いてOA重症度と細胞アライメントの関連について検討した.
  • 方法:13週齢Wistar系雄性ラット(n=30)を対象とし,右膝関節にDMM処置,左膝関節にSham処置を施した.サンプリングは術後0,1,2,4,8週目の時点で実施しOARSIスコア,細胞密度,空間自己相関分析(Z-スコア)を計測した.
  • 結果:OARSIスコアと細胞密度との間に負の相関関係を認めた(r=-0.41).また,OARSIとZ-スコア間においては強い負の相関を認めた(r=-0.62).
  • 結論:本研究の結果から関節軟骨の恒常性維持には軟骨細胞の数だけでなく,その配列パターンも重要な因子である可能性が示唆された.