9/12 勉強会
【研究報告】
担当:中村絵美
タイトル:学童野球選手における上腕骨近位骨端線損傷の危険因子に関する前向き研究
要旨
- 目的:学童野球選手に生じた上腕骨近位骨端線損傷(リトルリーグ肩)の危険因子を前向き調査により明らかにすること
- 方法:メディカルチェックに参加した学童少年野球選手を対象に,1年間の前向き調査を実施し,障害発生の有無を調査した.メディカルチェックでは,超音波検査による上腕骨近位骨端線部の状態を評価し,肩の理学所見,身体機能および下肢バランスの評価を行った.3か月ごとに超音波検査と理学検査を行い,上腕骨近位骨端線損傷の発生を調査した.1年の追跡調査後,上腕骨近位骨端線損傷の発生に関与する身体機能についてロジスティック回帰分析を用いて検討した.
- 結果:1年間の追跡調査により肩痛発生は10.5%にみられ,そのうち上腕骨近位骨端線損傷の初発率は21%であった.ロジスティック回帰分析の結果,肩後方タイトネスの左右差および前鋸筋/僧帽筋比が発症の危険因子として挙げられた.
- 結論:上腕骨近位骨端線損傷の発生の危険因子となりうる要因として,肩後方タイトネスの増大,僧帽筋に対する前鋸筋の筋機能低下が挙げられた.
- 今後:危険因子として挙げられた身体機能の問題が,運動学的・運動力学的に骨端線部に与える影響を検討し,プログラム介入による身体機能の改善や,発症予防効果についても検証していきたい.
【文献抄読】
担当:山﨑
タイトル:Transcranial Direct Current Stimulation Based Metaplasticity Protocols in Working Memory
要旨
- 諸言:前頭前野背外側部への10分のtDCSがワーキングメモリを改善することが報告されている.一方、近年ではメタ可塑性に基づきtDCSを複数回行うプロトコルが注目されている.
- 目的:メタ可塑性に基づいたtDCSプロトコルがWMを改善させるか検証すること
- 方法:45名の健常成人を対象に3つの実験を実施した.実験1では atDCS-10min rest-atDCSによるWMへの効果を、実験2ではrestを30min, 60minにしたときのWMの変化、実験3ではctDCS-10min rest-ctDCSとctDCS-10min rest-atDCSのWMの変化をそれぞれ検証した.tDCSは左DLPFCとし、刺激強度は1mAとした.2回目のtDCS介入の後半でWMの評価として3-back taskを実施した.
- 結果:atDCS-10min rest-atDCSはWMを改善させず、restを60minにした場合も改善は見られなかった.一方、ctDCS-10min rest-ctDCSではWMが改善した.
- 結論:事前のctDCSがホメオスタティックな可塑性を誘導し、その後のctDCSの効果を反転させWMを改善させることが明らかになった.