5/16 理学療法学会予演会

【理学療法学会予演会】

担当:高林

タイトル:ランニング時における後足部,中足部,前足部間の協調性パターンの定量化

要旨

  • 目的:ランニング中における後足部,中足部,前足部間の協調性パターンを定量化した.
  • 方法:対象は健常成人男性11名とした.対象者はトレッドミル上でランニング動作を10回行った.反射マーカー位置より各足部セグメントの回内/回外角度を算出した.協調性パターンの定量化にはmodified vector coding techniqueを用いて,4つのパターン(anti-phase, in-phase, proximal-phase, distal-phase)に分類した.
  • 結果:後足部-中足部の協調性パターンは吸収期でIn-phase(後足部と中足部が同程度の運動量で回内),推進期は中足部-phase(中足部が主に回外)が加わっていた.中足部-前足部の協調性パターンは吸収期と推進期でIn-phase(中足部と前足部が同程度の運動量で回内/回外と中足部-phase(中足部が主に回外/回外)が占めていた.
  • 結論:本研究において,推進期と吸収期で異なる足部セグメント間の協調性パターンが生じることがわかり,さらにランニング時は中足部の動きが重要な役割を果たしていることがわかった.
  • 今後:足部変形疾患患者を対象に検証していく.

 

担当:玉越

タイトル:脳出血後のスキルトレーニングが大脳皮質および線条体のAMPA受容体サブユニットに与える影響

要旨

  • 目的:本研究では,脳出血後のスキルトレーニングが大脳皮質および線条体におけるAMPA受容体サブユニットに与える影響について検討した.
  • 方法:実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた.対象を無作為に偽手術群(SHAM群),脳出血+非運動群(ICH群),脳出血+スキルトレーニング群(ICH+AT群)の3群に分けた.脳出血モデルは,コラゲナーゼを注入して作製した.スキルトレーニング群は,アクロバッティック課題を実施した.介入は,術後4~28日まで,1日4回実施した.感覚運動機能評価はmodified limb placing と postural instability testを用いて経時的に実施した.脳出血後29日目に両側の大脳皮質感覚運動野および線条体を採取した.リアルタイムPCRを用いて,AMPA受容体サブユニットであるGluR1,GluR2,GluR3,GluR4のmRNA発現量を解析した.
  • 結果:運動機能評価から前肢の運動機能障害についてICH+AT群は,ICH群より有意な改善を示した.AMPA受容体サブユニットのmRNA発現量の解析から,傷害側大脳皮質の全APMA受容体サブユニットにおいてICH+AT群は,ICH群より有意に高値を示した.
  • 結論:本研究から脳出血後のスキルトレーニングによる前肢運動機能回復の促進は,傷害側大脳皮質感覚運動野の全AMPA受容体サブユニットが関与していることが示された.

 

担当:中川弘

タイトル:伸張性筋収縮が筋線維膜透過性及び筋線維形態に及ぼす反復回数の影響

要旨

  • 目的:伸張性筋収縮(ECC)により筋線維膜透過性の増大(evans blue dye; EBD取込)が生じる.本研究では,ECCの反復回数の違いがEBDの取込を認める(EBD+)筋線維数及びその筋線維形態に及ぼす影響を検証することを目的とした.
  • 方法:8週齢雄性ラットを実験に用いた.ECC実施回数により20回群,40回群,ならびに80回群の3群に分けた.抗laminin抗体を用いて免疫組織化学染色を行い,EBD+及びEBDの各筋線維の面積,直径,真円度を画像解析ソフトにて計測した.
  • 結果:EBD+筋線維が認められた個体の各群での割合は,反復回数の増加に伴い漸増した.各群において,筋線維横断面積及び直径はEBD筋線維と比較してEBD+筋線維では高値を示した.真円度において,EBD+筋線維はEBD筋線維より低値を示し,より真円に近い値を示した.
  • 結論:ECCの反復により筋線維膜透過性の増大が観察されるが,その割合はECC反復回数により異なることが示唆された.またEBD+筋線維では,膨化並びにより真円に近い横断面形状を呈することが示された.

 

担当:佐々木

タイトル:反復的他動運動の運動頻度の違いが皮質脊髄路の興奮性に与える影響

要旨

  • 目的:本研究の目的は,反復的他動運動が皮質脊髄路の興奮性に与える影響を明らかにすることであった.
  • 方法:対象は健常成人15名であった.皮質脊髄路の興奮性の評価には,経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を使用した.刺激部位は左一次運動野手指領域した.他動運動課題は10分間の反復示指外転運動とし,運動頻度は0.5 Hz,1 Hz,3 Hz,5 Hzの4条件とした.MEPは介入前(pre)と介入終了後0分から10分までの2分毎(post 0-10)と15分後(post 15),20分後(post 20)に計測した.
  • 結果:0.5 Hzおよび1 Hz条件では,preと比較してpost 0でMEP振幅値の有意な低下が認められた.しかし,3 Hz条件では,MEP振幅値の有意な変化は認められなかった.さらに,5 Hz条件では,preと比較してpost 0からpost 15にかけてMEP振幅値の有意な低下が認められた.
  • 結論:0.5,1,5 Hzの他動運動を10分間反復することにより,皮質脊髄路の興奮性が低下することが明らかになった.また反復的他動運動後の皮質脊髄路の興奮性の変化には,運動頻度が関与することが示唆された.

 

担当:立木

タイトル:等尺性随意収縮の運動強度,運動時間の違いが皮質脊髄路の興奮性に与える影響

要旨

  • 目的:運動強度と運動時間を変化させたときの運動後促通(PEF)に着目し,皮質脊髄路の興奮性の経時的な変化を明らかにすることであった.
  • 方法:対象は健常成人15名であった.随意運動課題は運動強度を50%と30%,運動時間を15秒と30秒の組み合わせで4条件設けた.皮質脊髄路の興奮性評価は経頭蓋磁気刺激により運動誘発電位(MEP)を使用し,介入前と介入直後から5分まで1分毎に計測した.
  • 結果:時間要因で主効果が認められ,課題4条件で介入前に対して介入後1分から5分でMEPの有意な増大が認められた.
  • 結論:皮質脊髄路の興奮性は運動強度および運動時間に影響されず,運動課題4条件で介入前に対し介入後1分から介入後5分で有意に増大することが明らかになった.

 

担当:中村(雅)

タイトル:股関節肢位が足関節背屈ストレッチング効果に及ぼす影響

要旨

  • 目的:股関節肢位が足関節背屈方向へのスタティックストレッチング(SS)の効果に及ぼす影響について検討した。
  • 方法:対象は健常若年男性15名とした。股関節90°屈曲位(90°条件)もしくは30°屈曲位(30°条件)で足関節背屈方向にSS介入を行い,介入前後で最大の足背屈角度および角速度5°/秒の速度で他動的に足関節20°背屈させた時の足関節底屈方向に生じるトルク(受動トルク)を計測した.
  • 結果:両条件とも背屈可動域は増加し,受動的トルクは減少したが,受動トルク減少率は,30°条件のほうが90°条件よりも有意に高値を示した.
  • 結論:足関節背屈SSを行う際,股関節屈曲角度を大きくした肢位で実施すると下腿三頭筋の柔軟性改善効果が減少することが示唆された.

 

担当:正木

タイトル:地域在住中高齢女性における腰痛と立位姿勢アライメント,背部筋の筋量および筋硬度との関連

要旨

  • 目的:本研究では中高齢女性を対象に腰痛や腰痛既往の有無と立位姿勢アライメント,背部筋の筋量および筋硬度との関連について検討を行った.
  • 方法:対象は地域在住の中高齢女性48名をとし,腰痛群23名,腰痛既往群12名,健常群13名に群分けした.Spinal Mouse(Index社製)を用いて安静立位での胸椎後彎角度,腰椎前彎角度,仙骨前傾角度を算出した.筋量の評価として超音波画像診断装置(Supersonic Imaging社製)を用いて,腰部多裂筋,胸・腰部脊柱起立筋,腰方形筋の筋厚を測定した.また,超音波画像診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いて腰部多裂筋,腰部脊柱起立筋の筋硬度(弾性率)を測定した.
  • 結果:安静立位での腰椎前彎角度では腰痛群と健常群との間のみ有意差がみられ,腰痛群では健常群よりも腰椎前彎角度は有意に減少していた.
  • 結論:腰痛を有する地域在住中高齢女性は健常中高齢女性と比較して,背部筋の筋量や筋硬度には違いがないが,立位での腰椎前彎角度が減少していることが示された.