2/8 勉強会
【研究報告】
担当:中川(昌)
タイトル:他動運動時の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に与える影響
要旨
- 目的:他動運動時には関節角度および運動方向の違いで皮質脊髄路の興奮性は変化する.本研究では,示指の他動運動時における,関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響とメカニズムを明らかにすることを目的とした.
- 方法:健常成人13名(23.7±3.89歳)を対象として,右示指他動運動中のMEP振幅とM波,F波を計測した.MEPは経頭蓋磁気刺激(TMS)を左側一次運動野手指領域に与え,右FDIから記録した.末梢電気刺激は,刺激部位を尺骨神経とし,MEPと同様に右FDIより導出した.右示指他動運動は外転10°から内転30°の運動範囲で行い,運動速度は80 °/secとした.計測する関節角度および運動方向の条件は,内転運動時における内転0°および内転20°,外転運動時における内転20°および内転0°とした.5秒に1回の頻度で内転または外転運動を行い,安静時と他動運動中に計測した各値を比較した.
- 結果:安静時と比べ内転運動時の内転0°ではMEP振幅値の有意な増大が認められた(p < 0.05).しかしながら,安静時と比べ内転運動時の内転20°,外転運動時の内転20°,内転0°ではMEP振幅値に有意な差は認められなかった.また,M波F波においては,安静時と比べ各条件で有意な差は認められなかった.
- 結論:他動運動中の関節角度および運動方向の違いによるMEPの変化は皮質内で起こるメカニズムが関与していることが示唆される.
【文献抄読】
担当:大野
タイトル:Transcranial magnetic stimulation intensity affects exercise-induced changes in corticomotoneuronal excitability and inhibition and voluntary activation
要旨
- 目的:随意収縮中の運動野への経頭蓋磁気刺激(TMS)は、電気生理学と、標的筋での無意識的な反応を誘発する。運動誘導性変化に対する異なるTMS強度の影響は知られておらず、データの解釈を低下させている。本研究の目的は、大腿四頭筋での完全な等尺性運動前後、運動中の最大随意活動(VATMS)、運動誘発電位(MEP)、silent period(SP)で、TMS強度の影響を研究することである。
- 方法:11名の被験者は、最大随意筋収縮(MVC)の40%で、5秒間の最大下等尺性大腿四頭筋収縮10セットを、運動継続が困難になるまで行った。3つの異なるTMS強度(I100, I75, I50)は、20%MVCで最大複合筋電位(Mmax)の53 ± 6%, 38 ± 5% and 25 ± 3%のMEPを誘発しているものを用いた。各MEPとSPは、絶対的(MVCベースラインの40%)、相対的(50%, 75%, 100% MVC)力のレベル両方で評価した。VATMSは、I100 and I75で評価した。
- 結果:絶対的力レベルで測定した時、MEP/Mmaxは、運動中I50で増加、I100で低下、I75は変化がなかった。相対的力レベルでは、TMS強度の効果は観察されなかった。絶対的、相対的力のレベル両方で、各SPはI100で増加し、I75とI50は変化がなかった。I75で評価されたVATMSは、I100より低い傾向だった。
- 結論:TMS強度は、運動誘導性のMEP/Mmax(絶対的力で測定した時のみ)、SP、VATMSの変化への影響を与える。それら結果は、単一TMS強度で評価している随意活動と、運動が誘導する皮質運動ニューロン興奮性/抑制性の変化は、不適当である可能性を指摘している。