11/30 勉強会
【研究報告】
担当:竹原
タイトル:髪や頭皮から頭蓋骨までの厚さが近赤外線分光法による脳血流測定にに与える影響
要旨
- 背景:近赤外線分光法(NIRS)は,近赤外光を頭部に照射・検出することで皮質のヘモグロビン(Hb)を計測可能とした脳イメージング技術である.しかし,生体は散乱体であり,近赤外光は頭皮や頭蓋骨などの組織によって吸収・散乱されながら伝搬する.そのため,髪や脳組織までの厚さは,NIRSで測定されたヘモグロビン(Hb)に影響を与えると考えられ,検証が必要である.
- 目的:髪や脳組織までの厚さとNIRSより得られたHbの変動の大きさとの関係を明らかにすること
- 方法:被験者数は7名であった.関心領域は前頭前野と運動野とし,Hbの変動の大きさは脳酸素モニタで安静90秒間の酸素化Hb(O₂Hb),脱酸素化ヘモグロビン(HHb),総Hb(THb)の標準偏差とした.NIRS測定に影響を与える因子を髪の密度,髪の太さ,頭皮から頭蓋骨までの厚さとした.髪の密度は25mm²内から生える髪の本数,髪の太さは髪の直径の平均値を画像処理ソフトを用いて解析した.頭皮から頭蓋骨までの厚さは超音波診断装置を使用して計測した.各Hbの変動の大きさとNIRSに影響を与える因子との関係は,ピアソンの相関係数を用いて検討した.
- 結果:前頭前野,運動野におけるNIRSで得られた安静90秒間の各Hbの変動の大きさとNIRSに影響を与える因子間は相関関係が弱く(r<0.4),有意ではなかった(p≧0.05)
- 結論:前頭前野,運動野におけるNIRSで得られた安静90秒間の各Hbの変動の大きさとNIRSに影響を与えにくいことが示唆された.今後被験者数を増やしてさらに検証していく必要がある.
【文献抄読】
担当:横山
タイトル:The effect of trunk rotation during shoulder exercises on the activity of the scapular muscle and scapular kinematics
要旨
- 背景:肩疾患患者において,股関節や体幹を含むキネティックチェーンエクササイズの使用が推奨されている.しかし,これらのエクササイズの実際の筋肉活動と肩甲骨運動学は知られていない.この研究の目的は,肩甲骨機能を向上させるために考案された肩関節エクササイズに対する体幹回旋の効果を調べることであった.
- 方法:対象は13人の健健常成人.課題動作は体幹回旋有無での上肢挙上,1st,2stポジションでの外旋,肩外転45°,90°,145°の肩甲骨リトラクション運動.筋電図は僧帽筋上部(UT),中部(MT),下部(LT)と前鋸筋(SA)の筋肉活動を評価した.磁気センサーにて肩甲骨運動学を評価した.さらにUTに対してのMT,LT,SAの筋活動比率を算出した.これらのデータは,体幹回旋有無で比較された.
- 結果:立位で股関節,体幹同側最大回旋と上肢挙上,1stER,2stERはLT活動と肩甲骨内転,後傾を増加させた.体幹同側最大回旋とリトラクション90,145においてUT/LT比率が低下した.
- 結論:LT活動を促し,UTの過度な活動を抑制することが困難な患者や肩甲骨内転や後傾の減少が観察されるものに対しては,体幹回旋による肩運動が効果的であることが考えられた.