10/26 日本臨床神経生理学会予演会①

【日本臨床神経生理学会予演会①

担当:桐本

タイトル:一次運動野または補足運動野に対する経頭蓋静磁場刺激による体性感覚誘発電位の変化

要旨

  • 背景:NdFeb磁石を頭皮上に置く経頭蓋静磁場刺激(tSMS)は,新たな非侵襲的脳刺激ツールとして注目を集めている.
  • 目的:本研究は一次運動野(M1)または補足運動野(SMA)に対するtSMSにより感覚誘発電位(SEP)の振幅が変化するか否かを検証すること,及びNdFeb磁石の磁束密度計測を目的とした.
  • 方法:14名の健常成人を対象とし,M1またはSMAに対するtSMS及びSham刺激を15分間行い,刺激前,刺激終了直後,5分後,10分後にSEPを記録した.
  • 結果:M1刺激直後, P25とN33(C3’)の振幅が有意に低下した.一方SMA刺激は全てのSEP成分に何ら影響を及ぼさなかった.磁石から2-3 cm離れた距離(頭皮-皮質間)での磁束密度は110-190 mTだった.
  • 結論:tSMSの作用機序として,刺激部位周辺に生じるNa+やCa2+の開口速度低下が考えられ,100-150 mT程度の静磁場強度が必要とされている.この異方性嫌磁場効果はM1には及ぶものの,大脳縦裂内面に位置するSMAには到達しない可能性が示唆された.

 

担当:椿

タイトル:多段階運動負荷中の運動関連領野における皮質酸素化ヘモグロビン濃度の変化

要旨

  • 目的:本研究の目的は,多段階運動負荷中の皮質酸素化ヘモグロビン濃度の変化を運動関連領野で計測し,運動強度による差異を検討することである.
  • 方法:健常成人13名を対象とした.自転車エルゴメータによる下肢ペダリング運動を課題とし,安静4分,ウォームアップ4分の後,最大酸素摂取量の30%,50%,70%の負荷量で,各5分間の運動を実施した.この間の酸素化ヘモグロビン濃度(O2Hb)を,脳酸素モニタ(OMM-3000,島津製作所)を用い測定した.関心領域は前補足運動野,補足運動野,感覚運動皮質とし,5分間の同一強度内でのO2Hbの変化量を算出した.
  • 結果:いずれの領域においても,50%負荷時でO2Hbは増加するが,70%負荷時には減少した.また,70%負荷時の減少量は領域間で異なっていた(Freidman検定,p<0.01).
  • 結語:高強度運動時のO2Hbの減少量は,領域によって異なる.

 

担当:小丹

タイトル:短時間末梢神経電気刺激が一次運動野の興奮性に与える影響

要旨

  • 目的:一次運動野可塑的変化誘導法を検討するため,5秒間の末梢神経電気刺激が一次運動野の興奮性に与える影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人15名.介入課題として右尺骨神経に対して110 %運動閾値強度で50 Hzまたは200 Hzの電気刺激をそれぞれ5秒間与えた.介入60秒前から介入終了120秒後までの運動誘発電位(MEP)およびF波を右第一背側骨間筋より計測した.
  • 結果:200 Hzの末梢神経電気刺激を5秒間与えることにより,介入直後から30秒後までF波が有意に増大し,介入終了90秒後までMEP振幅値が有意に増大した.一方,50 Hzの電気刺激を5秒間与える介入ではMEPの有意な変化は認められなかった.
  • 結論:200 Hzの刺激頻度で5秒間の末梢神経電気刺激を施行することで,一次運動野の興奮性を増大させることが示唆された.