6/16 ISOTT and ICME 予演会

【International Conference on Complex Medical Engineering 2014 予演会】

担当:佐藤

タイトル:Mild cold water immersion increases corticospinal excitability in primary motor cortex

要旨

  • 目的:浸水による寒冷暴露が一次運動野の興奮性へ及ぼす影響を検証した.皮膚温の低下,寒冷暴露による不快感の増大および体温維持のための交感神経活動の亢進によって一次運動野の興奮性が増大すると仮説を立てた.
  • 方法:10名の成人男性を対象に,single pulse TMSを用いてMEP recruitment curveを測定し,皮質脊髄路興奮性を評価した.TMSの刺激強度は,50,80,90,100,110,120,130,150%@rMTとし,各刺激強度8回の刺激をランダムに行った.MEPは右FDI筋より導出した.TMS assessmentは,介入前(T0),浸水直後(T1),浸水15分後(T2),浸水30分後(T3),退水直後(T4),退水15分後(T5),退水30分後(T6)に実施した.30分間の浸水介入は,水温26℃および34℃の二種類を被験者毎にランダムに実施した.また,両手皮膚温および交感神経反応の経時的に測定し,快・不快感をTMS assessment後にVAS法を用いて測定した.
  • 結果: 34℃条件においてのみ,MEP recruitment curveの有意な増大,皮膚温の有意な低下および不快感の有意な上昇が認められた.一方,交感神経反応は,両条件ともに有意に低下した.
  • 結論:浸水による寒冷暴露は,皮膚温の低下および寒冷暴露による不快感の増大によって一次運動野の興奮性が増大する可能性が示唆された.

 

42nd Meeting of the International Society on Oxygen Transport to Tissue 予演会】

担当:椿

タイトル:Changes of oxyhaemogrobin signal during low-intensity cycle ergometer activity: A near-infrared spectroscopy study

要旨

  • 目的:低強度での定常負荷運動中の頭部酸素化ヘモグロビン信号(O2Hb)の変化を,頭皮血流(SBF)および平均血圧(MAP)とともに計測し,経時変化ならびに相関関係を明らかにすること.
  • 方法:安静4分,ウォームアップ4分の後,主運動として最高酸素摂取量の30%強度での自転車エルゴメータ駆動を20分間実施した.その後8分間の安静を含め,合計36分間の運動関連領野およびその周辺のO2Hbを計測した.同時にSBFおよびMAPを計測した.ピアソンの相関係数により,4分ごとにO2HbとSBF,O2HbとMAPの相関関係の強さを求めた.
  • 結果:O2Hbは主運動開始後7~8分にピークをとり,SBFのピークは主運動開始後15~16分であった.MAPは主運動開始中0~6mmHgで変動していた.O2Hbとの相関関係の強さは,SBF,MAPともに,計測を開始してからの時間によって異なっていた.
  • まとめ:低強度での定常負荷運動中において,O2Hb,SBF,MAPは異なった経時変化を示した.O2Hb信号にSBFおよびMAPが影響するかもしれないが,血流変化を捉えている可能性を示す結果であると考えられた.

 

担当:高井

タイトル:Effect of Transcranial Direct Current Stimulation over the Primary Motor Cortex on Cerebral Blood Flow:Time Course Study by Near-infrared Spectroscopy

要旨

  • 目的:一次運動野上のtDCSが頭蓋内血流動態に与える影響をNIRSを用いて明らかにすること.
  • 方法:安静3分の後,20分間の刺激(anodal条件,cathodal条件,sham条件)を行い,その全行程でNIRSを用い,経時的に酸素化ヘモグロビン濃度を計測した.
  • 結果:運動前野,補足運動野,一次運動野においてanodal条件,cathodal条件ともにsham条件に比べ有意な酸素化ヘモグロビン濃度の低下が観察された.一次体性感覚野においては,cathodal条件,sham条件に比べanodal条件に特異的な酸素化ヘモグロビンの上昇がみられた.
  • 結論:tDCSはanodal条件cathodal条件ともに,電極直下の領域のみならず,その他の皮質領域の脳血流に対しても広く影響することが示された.anodal条件は,一次体性感覚野に特異的な影響を及ぼすことが示された.

 

研究報告】

担当:菅原

要旨

  • 背景:運動療法の一つである「他動運動」は,運動療法の中でも特に多く用いられ,これまで脳磁界計測装置(MEG)や機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて他動運動後の脳活動が計測されている.しかしこれらの先行研究では他動運動介入後の脳活動領域の計測を行ったものであり,他動運動介入中における大脳皮質活動の経時的変化は明らかになっていない.そこで本研究では,課題施行中に複数の大脳皮質領域を同時にリアルタイムで計測でき,かつ課題施行に伴う大脳皮質活動の変化を経時的に計測することができる近赤外分光法(fNIRS)をもちいて,他動運動介入中の脳血流動態を調査することとした.
  • 方法:対象は健常成人15名とし,fNIRSを使用し,他動運動介入中の大脳皮質ヘモグロビン濃度変化を計測する. NIRSは近赤外光を用いて脳血流の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)および脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)の濃度変化が計測される.特にoxy-Hbは局所脳血流変化と相関が高いことが報告されており,oxy-Hbの変化が脳活動を反映する指標であるとされている.他動運動は右示指伸展とし,他動運動範囲を手掌面から500mm,関節運動スピードを300mm/sec,運動頻度を1.5Hzと1Hzに設定した.右示指伸筋に表面筋電計の電極を貼付し,他動運動介入中に筋活動が出現していないことを確認した.
  • 結果:1Hzの他動運動では脳血流動態に有意な変化は認められなかったものの,1.5Hzの他動運動において,補足運動野,左一次運動野,左一次体性感覚野,左頭頂連合野のoxy-Hbの有意な増加が認められた.
  • 結論:他動運動時には皮膚,筋,靭帯,関節など多くの感覚情報が大脳へ入力される.今回,1.5Hzの他動運動時においてのみ脳血流に変化が認められたことから,求心性入力による脳血流変化が生じるためには,持続的でかつ反復する感覚入力が必要である可能性が示唆された.