7/29 勉強会

【研究報告】

担当:松本

タイトル:目的的な手指の運動課題が同側一次運動野の皮質内抑制に及ぼす影響

要旨

  • 目的:手指の運動課題の合目的性が同側一次運動野内の短潜時および長潜時皮質内抑制(SICI,LICI)に及ぼす影響ついて検討した.
  • 方法:10名の右利き健常被験者が右示指で机上でのタッピング,机上に投影されたレーザーキーボードへの文字入力を行った.安静時,課題遂行時に運動肢と同側一次運動野への単発および二連発経頭蓋磁気刺激(TMS)を行い,左第一背側骨間筋より運動誘発電位(MEP)を記録した.二連発TMSの刺激間隔(ISI)は3 ms, 100 msに設定し,SICI,LICIをそれぞれ評価した.
  • 結果:文字入力課題遂行時におけるISI 100 msの二連発TMSによって得られたMEP振幅は,安静時およびタッピング課題遂行時と比較し有意に増大した.単発およびISI 3msの二連発TMSによって得られたMEP振幅に課題間の差は認められなかった.
  • 考察:本結果は,文字入力課題遂行時にLICI機構が抑制されることを意味し,目的的な運動遂行時には,運動肢と対側のみならず同側一次運動野の興奮性も増大することが示唆された.

 

【文献抄読】

担当:東原

タイトル:Reduced short-interval intracortical inhibition after eccentric muscle damage in human elbow flexor muscles.

要旨

  • 目的:二連発磁気刺激(paired-pulse TMS)を用いて,肘屈曲筋における伸張性筋収縮後の筋損傷が短間隔皮質内抑制(SICI)に与える影響を検証した.
  • 方法:男性被験者9名を対象とした.被験筋は非利き腕の上腕二頭筋とし,伸張性肘屈曲運動を等尺性最大トルクが運動前の40%に低下するまで行った.運動前,2時間後,2日後に等尺性最大筋力,立位安静時の肘関節角度,最大トルク発揮時の至適肘屈曲角度,および安静時・収縮時(5%MVC)の短間隔皮質内抑制(SICI)を測定した.また,腕神経叢を電気刺激し上腕二頭筋よりM波を測定した.
  • 結果:運動前に比べ運動2時間後において,等尺性最大筋力の減少(34%, p < 0.001),M波の減少(41%, p = 0.01),立位安静時の肘屈曲角度の増加(10°, p < 0.001),至適肘屈曲角度の変化(18°, p < 0.05)が認められた.運動2日後には有意な筋力低下(27%, p < 0.001)と遅発性筋痛(DOMS)が認められた.MEP振幅を各測定で一致させた時,運動2時間後において安静時のSICIは27%,収縮時のSICIは23%低下したが,運動2日後には運動前の値に回復した.
  • 考察:運動2時間後において安静時・収縮時のSICIはともに低下し,DOMSが現れる2日後には運動前の値まで回復したことから,遠心性運動によるDOMSはSICIに影響を及ぼさないと考えられた.SICIによる皮質内抑制効果の減少には,筋損傷による筋内の求心性入力機構の短期的(<24時間)な変化が影響していると考えられた.