7/22 勉強会

【運動生理学会シンポジウム予演会】

担当:桐本

タイトル:Plasticity of human motor associate and primary sensorimotor cortices induced by tDCS

経頭蓋直流電流刺激による高次運動連合野及び一次感覚運動野の可塑的変化

要旨

Nitsche とPaulus (2000)が,経頭蓋直流電流刺激(Transcranial direct current stimulation: tDCS)によりヒトの運動野の興奮性を変化させられることを初めて報告した.それ以来,tDCSは脳を非侵襲的に刺激できる有用な手技として,健常者の脳機能を研究するだけでなく,様々な神経障害の治療を促進する手段としても使われている.

tDCSでは,刺激する脳部位上の頭皮に電極が密着するように固定し,刺激電流は直下の皮質組織に到達する.この時の電流の方向によって,直下の皮質組織への効果が異なる.一次運動野(M1)上に陽極電極を置いてtDCSを行った場合(陰極は対側前額部に設置),皮質の興奮性を促進し運動誘発電位(MEP)の振幅が増大する.一方,M1上に陰極電極を置いた陰極tDCSでは反対の効果が得られる.反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)が高価で大型な装置や,1 kg前後の刺激コイルを一定の位置に保持する技術を要するのに対し,tDCSは比較的安価で小型な装置を使い,刺激電極の固定が容易であることが実用上の利点である.rTMSより遅れて普及し始めたtDCSの臨床での有効性は,まだ十分に示されているとは言い難いが,より効果が高い刺激電極の配置やサイズ,刺激電流密度と時間などが標準化されていくに従い,扱いやすい非侵襲的な脳刺激ツールとして利用する臨床医や神経生理学系の研究者が増えていくと予想される.

本シンポジウムでは,我々がこれまでにtDCSを用いてヒトの運動制御機構について行ってきた,以下3点の研究結果についてご報告させていただく.

1)       運動連合野への経頭蓋直流電流刺激による同側一次運動野及び体性感覚野の可塑的変化の誘導

2)       補足運動野に対する経頭蓋直流電流陰極刺激が先行随伴性姿勢調節機能に及ぼす影響

3)      直流電流による両側半球二重刺激法を用いたヒトの運動関連領野の可塑的変化の誘導

 

【文献抄読】

担当:豊栄

タイトル:Neural Correlates of the Antinociceptive Effects of RepetitiveTranscranial Magnetic Stimulation on Central Pain After Stroke.

要旨

  • 背景:rTMSは,脳卒中後の一部の患者においてcentral neuropathic painを調節するが,作用メカニズムは不明である.
  • 目的:22例のpoststroke central pain患者で視床皮質路のintegrityと疼痛ネットワークの活性化パターンを評価するために拡散テンソル画像とfMRIを用いた.
  • 方法:FDIのhotspotに5日連続で1000パルス10HzのrTMSセッションを行った.疼痛重症度はVASを用いてモニターした.MoodはHDRSによって評価した.
  • 結果:rTMS後のVAS改善は,14例のresponderでみられ,介入後2週間続いた.また.うつ重症度とrTMSの高い鎮痛作用の間に有意な相関を示した.損傷半球のsuperior視床皮質路のintegrityは,rTMS後のVASスコアの変化に有意な相関を示した.fMRIは,rTMS後,responder でSⅡ,insula,前頭前皮質,被殻で有意な活動減少を示したが,nonrespondersでは変化がみられなかった.
  • 結論:MoodはrTMSの抗侵害性作用に影響を及ぼす可能性がある.そして疼痛ネットワークの調節はsuperior TCTによって媒介される可能性がある.