4/2 勉強会

文献抄読

担当:桐本

文献: Oliviero et al. Transcranial static magnetic field stimulation of the human motor cortex. J Physiol 589(20):4949-4958, 2011

要旨

  • 目的:健常者を対象に,頭皮上に静的磁場を与えることは,非侵襲的に運動野の興奮性を変化させる手段となりうるか否か,その可能性を検証した.
  • 方法と結果:静的磁場による刺激にはネオジム磁石を使用した.
    (実験1)経頭蓋静的磁場刺激(tSMS)を10分間行った前後に単発TMSにより誘発されるMEPを記録した.tSMS後,6分間に渡りMEP振幅の約25%程度の低下が認められた.MEP振幅の低下は,磁力の強い磁石の使用時にのみ認められ,その極性は影響を及ぼさなかった.
    (実験2)二重盲検デザインによる同様の実験においてもtSMSによるMEP振幅の低下が認められた.
    (実験3)tSMSの刺激時間が1分間と5分間の場合はMEP振幅の低下が認められなかった.
    (実験4)錐体細胞の軸索を直接刺激するTESにより得られたMEP振幅にはtSMSの影響は認められなかった.
  • 結論:tSMSによるMEP振幅の低下は,皮質の介在ニューロンを経由した興奮性の変化によるものであると考えられる.tSMSは小さな磁石のみを用いて皮質の興奮性を非侵襲的に痛みを与えずに抑制する方法として,今後注目を集める可能性がある.

研究報告

担当:山代

研究テーマ:Skill specific Go/No GO potentials in baseball player

  • 目的:手指の感覚を頻繁に利用する野球選手はその他のスポーツ選手に比べ,NoGo電位の増大や短縮,選択反応時間の短縮が起こるかどうかについて検討した.
  • 方法:野球選手(n=6),その他のスポーツ選手(n=4)を対象とし,1:3の割合で示指にNoGo刺激を小指にGo刺激を提示した.NoGo反応を50回2セット記録し,Go時の反応時間も同時に記録した.
  • 結果:野球選手はNoGo電位の潜時が短縮する傾向が認められた.振幅に関しては明瞭な変化は認められなかった.
  • 考察:先行研究において技術特異的な皮質可塑性について報告した.今回の研究では,技術特異的に,単純な判断のみならず,より複雑な課題を行う場合でも情報処理速度が向上している可能性が示唆された.