健康増進のための運動プログラムの開発

(1) 運動プログラムの開発に向けた基礎的研究

脳卒中患者における日常生活動作の再学習を目指した水中運動プログラムの開発を目指し,浸水が引き起こす「脳活動の変化」や「感覚情報処理の変化」に関する研究を進めています.これまでに,近赤外線分光法を用いた研究によって,「水に浸かる」ことがヒトの感覚運動関連領野の活動を変化させることが分かりました(図1, Sato et al., Brain Topography 2011).また,浸水環境において体性感覚誘発電位を測定した結果,「水に浸かる」ことでP25およびP45の振幅が減少しました(図2, Sato et al., BMC neuroscience 2011).このことから,「水に浸かる」ことがヒトの一次体性感覚野における感覚情報処理を変化させる可能性が明らかとなりました.

図1:浸水によるヘモグロビン量の変化を示しています.

図2:浸水環境および非浸水環境における体性感覚誘発電位を示しています.

(2) 運動プログラムの効果検証

安静時および運動時におけるヒトの生理学的変化に関するエビデンスを基に,様々な対象者の健康増進を目指した運動プログラムの開発を行っています.これまでに,要介護認定者の介助量を減少させる水中運動プログラム(水中ADLエクササイズ)や椅子に座った状態で実施できるチェアエクササイズなどを提案してきました.要介護認定者を対象に,介護予防サービスの一環として週2回の水中運動を処方した結果,起居移乗移動動作に対する介助量が減少し,様々な身体機能が改善することが分かりました(図3, Sato et al., 2007, 2011).

図3:水中運動プログラムの介入によって起居移乗移動動作に対する介助量が減少したことを示しています.